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基礎的医薬品

今回は、平成28年度薬価制度改革において試行的な取組みとして導入された「基礎的医薬品」について解説します。


導入の経緯

平成27年9月4日に厚生労働省から公表された医薬品産業強化総合戦略において、我が国の医薬品産業の主な現状と課題の1つとして、“基礎的医薬品は、度重なる薬価改定で一部について採算が悪化、安定供給策が必要”とされました。具体的には、「基礎的医薬品」の安定供給のための薬価上の措置として、“例えば、長期間にわたり薬価収載されており、累次に渡る薬価改定を受けているものの内、医療現場の要望があるため、供給停止もままならないような医薬品については、継続的な市場への安定供給を確保する必要がある。このため、最低薬価では供給の維持(製造設備の改修を含む)が困難な品目や以前に不採算品再算定を受けた品目も含め、基礎的医薬品の要件を明確にした上で、薬価上必要な措置などについて検討を行う”とされました。

これを受けて、基礎的医薬品については、現行の不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度として位置付け(表1)、平成28年度薬価制度改革においては試行的な取組みとして、過去の不採算品再算定品目、並びに古くから医療の基盤となっている病原生物に対する医薬品及び医療用麻薬を対象として、乖離率等の要件を満たすものについて、最も販売額が大きい銘柄に価格を集約してその薬価を維持することとされました。なお、基礎的医薬品の制度によらず十分な収益性が見込まれる品目は対象外とするとともに、基礎的医薬品として薬価が維持されている間は継続的な安定供給を求めることとされています。

表1 基礎的医薬品の位置付け

制度

内容

薬価

基礎的医薬品

(制度の位置付け)

●現行の不採算品再算定、最低薬価になる前の薬価を下支えする制度。 (対象品目の要件)
●保険医療上の必要性が高いもの。
●医療現場において、長期間にわたり広く使用されていることから、有効性・安全性が確立されているもの。
●継続的に市場への安定供給を確保(製造設備の改修を含む)することが必要なもの。

高い

低い

不採算品再算定

●保険医療上の必要性が高いもの。

●最低薬価が設定されていない、または、最低薬価では採算が取 れないもの。

●薬価が著しく低額であるため製造販売業者が製造販売を継続することが困難であるもの。

最低薬価

●剤形ごとにかかる最低限の供給コストを確保するため、成分に関 係なく剤形ごとに設定しているもの。

具体的な内容について

平成28年度薬価改定においては、次の全ての要件(イ~ニ)に該当する既収載品(十分な収益性が見込まれるものを除く。)については、薬価改定前の薬価(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、薬価改定前の薬価を基に計算した年間販売額が最も大きい銘柄の薬価改定前の薬価)を当該既収載品の薬価とすることになりました。

  • イ)医療上の位置付けが確立し、広く臨床現場で使用されていることが明らかであること
  • ロ)当該既収載品並びに組成及び剤形区分が同一である全ての類似薬のうち、薬価収載の日から25年を経過しているものがあること
  • ハ)当該既収載品と組成及び剤形区分が同一である類似薬がある場合には、当該既収載品を含む類似薬の平均乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
  • ニ)当該既収載品の市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
  • その結果、134成分617品目が、“基礎的医薬品”の対象となりました(表2)。そのうち、JGAの会員会社の品目も109品目含まれています(表3)。

表2 基礎的医薬品の対象品目

区分

成分数(品目数)

品目(例示)

主な効能効果

病原生物

51(163)

アモリン細粒

エブトール錠

レトロビルカプセル

アラセナ-A点滴静注用

各種感染症

肺結核 等

HIV 感染症

単純ヘルペス脳炎 等

麻薬

6(33)

MSコンチン錠

アンペック注

激しい疼痛を伴う各種癌における鎮痛

激しい疼痛時における鎮痛・鎮静 等

不採算

77(421)

アレビアチン散

チラーヂンS散

経口用エンドキサン原末

パム静注

ソルデム3輸液(維持液)

てんかんのけいれん発作

乳幼児甲状腺機能低下症

多発性骨髄腫 等

有機リン剤の中毒

経口摂取不能な場合の水分補給 等

合計

134(617)


表3 JGA 会員会社の会社別基礎的医薬品品目数(平成28年4月現在)

品目数

会員会社名

25

光製薬

12

マイラン製薬

9

共和クリティケア、テバ製薬

7

東和薬品

6 長生堂製薬、日医工、日新製薬、富士製薬工業
5 沢井製薬
4 サンド、大興製薬
3 シオノケミカル、高田製薬
1

コーアイセイ、ダイト、辰巳化学、鶴原製薬

109 合計

ただし、当該既収載品と組成、剤形区分が同一である類似薬があり、汎用規格の当該類似薬がニの要件を満たさない場合については、該当する品目をひとまとめにして加重平均した額を当該類似薬の薬価(統一名収載)とすることとされました。(基礎的外れ医薬品)


したがって、基礎的医薬品の対象となった品目の薬価については、同一の成分・剤形・規格の長期収載品と後発医薬品のグループにおいて、“基礎的医薬品”と“基礎的外れ医薬品”の最大2価格帯になりました。(基礎的外れ医薬品がない場合や、基礎的医薬品と基礎的外れ医薬品の薬価が同一の場合は、1価格帯となります。)(図1)


図1薬価の具体例(ホスホマイシンナトリウム注1g1瓶)

薬価の具体例 (ホスホマイシンナトリウム注1g1瓶)



基礎的医薬品についての留意点

基礎的医薬品は、これまでにない新しい概念の医薬品の分類ですので、注意しておかなければならないことがたくさんあります。



●安定供給は絶対

後発医薬品は、薬価収載されてから5年間の安定供給を求められていますが、これとは別に、基礎的医薬品については、よほどのことがない限り供給をやめられないとされています。 GE豆知識 -27- NEWS2016年(平成28年)12月104号


●市場実勢価格は平均乖離率以内

薬価調査のときに、市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないものだけが、基礎的医薬品として改定前の薬価が維持され、平均乖離率を超えると“基礎的外れ医薬品”になります。“基礎的外れ医薬品”の薬価はグルーピングされ、市場実勢価格により加重平均された値となります。


●診療報酬上の後発医薬品から除外

今回、基礎的医薬品の対象になったものは、もともと後発医薬品であったものや長期収載品であったものが含まれていますが、もともと後発医薬品であったものも、“診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品”からは除外されました。したがって、後発医薬品の使用促進の各種インセンティヴの対象ではなくなります。また、後発医薬品の数量シェア(新指標)の計算においても、今回基礎的医薬品の対象になったものは、分母・分子から外れることとなります。さらに、基礎的医薬品の対象になったものについては、一般名処方加算の対象外となりました。


●代替調剤は引き続き可能

基礎的医薬品の対象となったものについては、診療報酬上の後発医薬品ではなくなりましたが、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたものについては、従来と同様に変更調剤を行うことができます。(平成28年9月15日厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その7)」)


おわりに

今回、基礎的医薬品の対象は、過去の不採算品再算定品目、病原生物に対する医薬品及び医療用麻薬に限定されましたが、平成28年度診療報酬改定の答申書附帯意見において、基礎的医薬品の在り方については引き続き検討することとされており、平成28年度厚生労働科学研究では、対象範囲の拡大も視野に基礎的医薬品の在り方に関する研究もおこなわれています。しかしながら、今後、基礎的医薬品の対象でありながら平均乖離率を超えるものが多くなると、対象範囲の拡大の機運に水を差すことになるばかりでなく、試行的に運用された基礎的医薬品の制度そのものの崩壊を招きかねません。 JGAにとっても、今後長期間に渡って医薬品を安定的に供給していくための大切な制度ですので、制度の維持、拡充に向けた会員各社のご理解、ご協力をお願いいたします。



(薬価委員会)