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月刊JGAニュース

“社会の見る目”を意識した新産業ビジョン策定を  

Monthly ミクス編集部
報道局 望月 英梨

 日本ジェネリック製薬協会は、ジェネリック医薬品産業ビジョンの今秋策定に向けた議論に着手した。右肩成長を続けてきたジェネリック医薬品ビジネスも、後発品80%目標を目前に控え、新たな局面を迎える。それだけではない。医療ICTやビッグデータといった新たなテクノロジーが社会システムを一変させ、いまのビジネス環境において無視できない存在にまで急成長している。極端に言えば、AI(人工知能)が診断の精度を高め、ロボットが手術を行い、処方薬はドローンが患者に届ける。2040年には、そんな世界が到来する。破壊的イノベーションが、我々の背中に音もなく迫っているのだ。
 ビジネス環境を一変させる代表格として、私は「地域フォーミュラリ」の存在をあげたい。
 一つのデータが、医療者の行動変容を促すことを想像できるだろうか。協会けんぽ静岡支部の取り組みに、全国各地から熱い視線が投げられていることをご存知だろうか。
 彼らが注力するのは、静岡県内にあるレセプトデータの詳細分析だ。もちろんその視線は、後発品の使用比率も含めた処方薬の使用状況に注がれる。基幹病院、保険薬局ごとに処方動向を分析したデータを活用し、地域フォーミュラリ導入に向けて病院薬剤部へ働きかけを行っている。
 データを通じた処方動向の“見える化”は、基幹病院、保険薬局それぞれがベンチマークされ、医療従事者の処方動向を含めた行動変容につながる。この話は一見、ジェネリック医薬品ビジネスにとっては追い風にも見えるが、そうとも限らない。ビッグデータの活用は、医療従事者自身の課題や改善ポイントを抽出する魔力がある。例えば医師や薬剤師が隣の芝生をみるように、自院における処方薬の課題を見つめ、そして解決策を自身が見つけ出す。こうした個々の活動が地域内で行われ、そのデータが集積され、それを共有することで、地域医療のシステムそのものを大きく改善するパワーを秘めている。
 これまで医薬品産業を論じる基盤にあった地域の医療システムが、データヘルスの登場と最新テクノロジーの融合で、着実に現在の医療システムは変革を迎えることになる。それも逆戻りできない方向にだ。ジェネリック医薬品産業ビジョンの改訂は、ある意味必然とも映る。

◎製薬協の政策提言 社会をプラスに生み出す

 日本製薬工業協会(製薬協)は1月24日、「政策提言2019-イノベーションの追求と社会課題の解決に向けて」を公表した。ビッグデータやAIの“Society5.0”時代を見据え、新たなヘルスケアイノベーション創出エコシステムの構築を提言した。がんゲノム情報などのビッグデータをAIで解析することで、治癒を可能にする革新的新薬の創出を目指す。さらに“未病”にフォーカスしたソリューションの早期実用化なども視野に入れる。健康寿命の延伸、さらには日本経済への貢献も期待できるというわけだ。
 こうした将来像に向け製薬協は、「医薬品の多面的価値」の評価を政府側に要望した。新薬の有効性や安全性といった既存の評価軸だけでなく、革新的新薬の処方で治癒した患者の職場復帰や労働生産性向上などの社会的価値を薬価に反映する制度設計を求めているのだ。
 「医薬品のイノベーションが社会にプラスを生み出すものかを、ぜひ機会あるごとに伝えていきたい。中長期的に意味のあるイノベーションには投資しようと理解は得られるものだと思っている」-。中山讓治会長(第一三共会長)は記者会見でこう話した。

◎輝くジェネリック医薬品業界となるために 1兆円市場、その先に・・・

 いまや1兆円市場に成長したジェネリック医薬品ビジネスも同様だ。新年早々、ジェネリック医薬品ビジネスの話題が新聞各紙をにぎわした。高リン血症治療薬・炭酸ランタンの販売で独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会は日本ケミファとコーアイセイ(山形市)に立ち入り検査を行った。発売前に医薬品卸に提示する仕切価を談合した価格カルテルの疑いが強まったためという。「ジェネリック医薬品メーカーではよくある話」との声も囁かれるが、一つの製品を複数の製薬企業が販売するビジネスモデルに疑問の念を抱く関係者は少なくない。後発医薬品の数の多さが、保険薬局での在庫の問題となり、医薬品卸のビジネスにも大きく影響しているのは否めない。いまこそ、ビジネスモデルそのものを見直すべき時ではないか。

 ジェネリック医薬品産業ビジョンを描くためには、会員各社もマイナス面ばかりいとわずに、まずは将来像を描き、そこから現代まで遡るロードマップを作成する勇気も今こそ必要だ。

 価格を武器に、これまでジェネリック医薬品ビジネスは成長を続けてきた。ただ、それだけでは、国民や社会の期待に応えるには不十分だろう。政府が掲げるSociety5.0は明らかに社会基盤や社会サービス全体に変革をもたらすに違いない。製薬業界も同様に、産業構造改革の時が迫っている。先述した中山製薬協会長は、その先駆者であり、革新的新薬こそが日本の製薬産業をリードすると主張している。これに対し、ジェネリック医薬品業界はどう応えるのか。社会システムが変わる時代だからこそ、ジェネリック医薬品が輝く医療でなければならない。まさに国民に貢献できる産業として発展することが求められているのだ。
 実際、昨年来から議論を続けてきたジェネリック医薬品産業ビジョンの議論では、会内から直面する課題の重大性を指摘する声があがっていると聞く。ジェネリック医薬品産業ビジョンがこれからの“社会の目“を意識し、将来を照らす大胆な切り口となることに期待したい。

 

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