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トピックス

“バイオセイム”の放つインパクト

Monthly ミクス編集部
報道局 望月 英梨

 国内初のバイオセイムの上市が迫っている。協和発酵キリンの100%子会社である協和キリンフロンティアが2018年8月、協和発酵キリンのネスプのオーソライズドジェネリック(AG)として、「ダルベポエチンアルファ注シリンジ「KKF」」の販売承認を取得しており、6月にも薬価追補収載が見込まれる。
 こうしたなか、中医協薬価専門部会・総会は3月27日、有効成分や製法が先発品と同一であるバイオセイムの薬価算定を暫定的にバイオシミラー(バイオ後続品)と同様、0.7掛けとすることを了承した。
 承認申請を行った協和キリンフロンティアは、臨床試験を行っておらず、後発品として申請し、承認された。バイオ医薬品のAGとして0.5掛けとなるのか、それともバイオシミラーとして0.7掛けで算定されるのか―。通常であれば、製薬企業は少しでも高額な薬価を望む。しかし、今回は少し様相が異なる。
 背景にあるのは、透析市場の特殊性だ。透析市場は“低価格”こそが市場占有の武器となる。長い歴史の中で、頻回の透析治療が医療費を増大させていることが問題視され、透析医療をめぐる診療報酬点数は度重なる引下げが行われてきた。直近の2018年度改定でも、大規模施設を中心に血液透析の診療報酬点数を引き下げた。包括点数であるだけに、低薬価のインセンティブが他市場以上に働きやすいのだ。


◎バイオセイムそのものが製品戦略に

 特に、ネスプについては、18年度薬価改定で新薬創出等加算を取得している。要件から平均乖離率が外れ、希少疾病の「骨髄異形成症候群に伴う貧血」の適応を取得していたためだ。バイオセイムの薬価が引き下がるほど、医療機関経営の観点からはメリットは大きくなる。医療従事者のなかにはバイオシミラーに懐疑的な声も依然として少なくないが、バイオセイムであれば敷居は低くなる。医療機関側にとってバイオセイムを採用するメリットが揃っている。そのため、先発品からの切り替えにとどまらず、競合品のシェアをも奪い、一気に市場占有率を拡大する可能性が高い。加えて、競合メーカーの参入意欲を削ぎ、今後のバイオシミラーの産業振興にも少なからず影響を及ぼすとの声も聞かれる。誤解を恐れずに言えば、バイオセイムを後発品として承認を取得すること、そのものが製品戦略にも映る。
 さらに今回のスキームにも特殊性がある。「ダルベポエチンアルファ注シリンジ「KKF」」は、製造販売承認を協和キリンフロンティアが取得。そのうえで、製造を親会社である協和発酵キリンが受託する。製造工場は、原薬が協和発酵キリン工場、製剤は委託先工場であることも同様だ。生物学的にほぼ同等な“バイオセイム”を製造することになる。2005年の薬事法改正で、従来の製造業から製造販売行為を分離することを認めており、現行の医薬品医療機器等法(薬機法)の範囲内ではあるものの、子会社が親会社に製造を委託するという滅多にない体制を敷く。三責要件を満たすなど、製造販売業者としての体制整備も必須で、このスキーム自体のハードルも決して低いとは言い難い。バイオ医薬品を国内で製造できる製薬企業も少ないことから、「バイオ医薬品のAG」を求める例はほとんどないのでは、との声もある。
 「適正な競争環境を維持する」―。この日の中医協では、この言葉が再三繰り返された。すでに低分子医薬品では、オーソライズド(AG)が存在感を増している。2018年度薬価制度抜本改革で、G1が導入され、将来的には、特許期間終了後に価格帯が一本化する可能性も強い。薬価差は時として、強力な武器になりうる。ただ、安売りにならないためにも、今こそ薬価差だけでないビジネスモデルを構築することが迫られている。

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