EN

月刊JGAニュース

特別寄稿  

公益社団法人江戸川区薬剤師会の取り組み

公益社団法人 江戸川区薬剤師会 会長 篠原 昭典

img01 (1).jpg先ずは、江戸川区の説明をさせて頂きます。場所は東京の一番東側にあり、すぐ隣が川を挟んで千葉県になります。南北約13キロメートル、東西約8キロメートル、面積は49.09平方キロメートルと東京都の中でも1位2位を争う大きな行政区です(図1)。周囲を(旧)江戸川・(新)中川・荒川などの大きな川に囲まれた、いわゆる0メートル地域で、区内にも小さな川が流れ、それらに親水公園が設置され、その総延長は9,610メートル(総面積208,888平方メートル・いわゆる東京ドーム4.5個分)にも及ぶ緑豊かな地域です。これら親水公園は、江戸川区が最初に設置しており、これに加えて18か所の親水緑道(総延長17,680メートル)の設置は、行政が区民の健康や防災・防火などを目的に設置してきたものです。
 今では、親水公園で春には桜を楽しみ、夏には子供たちが水遊びを行い、また、親水緑道と合わせて、高齢者や幼児たちの散歩コースや憩いの場として区民の健康やフレイル防止の為に大いに一翼を担っております。
 この様に、江戸川区においては、行政も地域住民も健康に対してとても熱心に考えており、特に熟年者においては、地域の住民自らが昭和33年9月に老人クラブを発足させ、昭和36年9月には連絡協議会を結成、さらには昭和56年4月より「くすのきクラブ」に名称変更し、熟年者の健康増進等を図ることを目的に各種講演会・研修会やリズム体操・レクリエーションの開催を行っています。
 これは、江戸川人気質と言えるかも知れませんが、行政主体というよりも、地域住民が主体となって、自分たちの健康を維持したいとの思いが根底にあり、それを行政が十分に後ろ盾していき、地域住民が共に支えあい、健康で豊かな人生を謳歌している様な気が致します。
 さて、江戸川区は決して熟年者ばかりの地区ではありません。
 そこに住む区民は平成30年1月現在で695,366名、その平均年齢は43.38歳(東京都平均44.76歳)と比較的若い住民が多い地域です。
 いわゆる、下町風景の様な以前からある町内会や子供会、児童館・共育プラザだけではなく、今般新たに、「なごみの家」と呼ばれる地域支えあい活動拠点が設立されました。子供からお年寄りまでをワンストップで相談出来る施設であり、子供たちの居場型学習支援を行うなど子供たち本人や子育て中の若い世代を守る施設も多く出来て来ています。
 この様な地域で活躍する公益社団法人江戸川区薬剤師会は会員数255名、会員薬局店舗数173(江戸川区総薬局数243)であり、とても大規模な薬剤師会です。
 さて、そろそろ本題に入りましょう。
 皆さんご存知の通り、東京都の医療費は全体の約10%を占めており、そこの保険薬局数も6,500件(全体の11.2%)を超え、市場性が大きいことからジェネリック医薬品調剤体制加算の算定についても大きく注目されていました。平成29年1月時点で算定件数は多いものの、その算定比率は47.5%と全国平均を下回る状況でした。
 江戸川区薬剤師会においては、平成19年に「経済財政改革の基本方針2007」が閣議決定され、5年後(2012年度)に後発医薬品の数値目標30%とされた段階で、どの様にしたらジェネリック医薬品という言葉が地域住民に浸透するか、ジェネリック医薬品を選択してくれる様になるかの検討を開始し、江戸川区と話し合いを行いました。平成24年度診療報酬改定の際に、【ジェネリック医薬品を選択する=自己負担が安くなる】ではなく、【ジェネリック医薬品を選択する=社会保障費(医療費)の減額になる】という意味を大きく打ち出す事で、地域住民からジェネリック医薬品に対する理解を得られないかと、薬局内に掲示出来るポスター(図2)を作成し、会員薬局だけでなく、区の施設等にも配布して、掲示して貰いました。

img02.jpg

 2007年に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」が作成されたのを機に、ジェネリック医薬品を知って貰い、多くの患者さんに選択して貰える様にする為には、当時世間で説明されている様な「一部負担金が安くなりますよ!」では、負担金のある方々や支払を少しでも安くしたいと考えている方々へのアピールには繋がりますが、それ以外の方々にはなかなか賛同が得られないと考えました。そこで、先ほどお伝えした「くすのき倶楽部」でのお薬相談会や正しい薬の使い方勉強会などで、ジェネリック医薬品の品質について説明を行い、更にはジェネリック医薬品にしかない口腔内崩壊錠をその場で実験して、すぐに口の中で溶け飲みやすく先発医薬品より工夫がなされている事などを目の前で見せる事により、〔ジェネリック医薬品=安かろう・悪かろう〕のイメージの払拭に努めてきました。さらには、薬剤師会で作成したポスターの様に、医療費全体の削減の為にも税金の使い道を考えて欲しいとの訴えを継続してきました。この様な活動の結果、勉強会に参加された高齢者だけではなく、その方々の力によって他の「くすのき倶楽部」の会員の方々にも、徐々にジェネリック医薬品に対する拒絶感が薄れてきたものと捉えてい
ます。介護者交流会でも、同様な活動を行い、ジェネリック医薬品選択の輪を徐々に広げて行く事が出来ました。特に、なごみの家での“子供向けお話し会”などで、子ども達の薬物等の乱用防止やご両親への禁煙のお願いを話すだけでなく、ジェネリック医薬品の普及についても、保護者に使用のお願いをさせて頂きました。これらの活動が実を結び、患者一部負担金の少ない患者さんからも、薬剤師が尋ねる前に、ジェネリック医薬品を希望するとの依頼が多く出る様になりました。
 さらには、2013年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が策定されたのを機に江戸川区と共同して、ジェネリック医薬品の使用頻度の低い保険薬局を調査させて頂き、その保険薬局に出向き、使用頻度の低い理由を調査し、ジェネリック医薬品の使用促進の依頼を行ってきました。
 また、医師からの変更不可指示により、ジェネリック医薬品が使用出来ない場合は、江戸川区職員にその医療機関を訪ねて頂き、ジェネリック医薬品の使用促進のお願いをして頂きました。
 2013年に日医工サノフィにより、アレグラのオーソライズド・ジェネリック(以下AG)が発売された際には、薬剤師会でAGによるジェネリック使用促進が図れないか検討を行い、2017年2月に第一三共エスファから5品目のAGが発売された際には、第一三共エスファからAGの啓蒙ポスターを入手し、薬剤師会の研修会等でAGの使用により、品質等でジェネリック医薬品を拒絶されている患者さん対応を考えて欲しいとのアピールを行って参りました。
 さらに、これを機に江戸川区に対してもAGの説明を行い、AGに対する理解を頂き、加えて、変更不可指示の多い医療機関に対してAGへの変更についてご協力の依頼を行って頂きました。
 その結果、AGへの変更のみ許可が出る様になり、さらにはジェネリック医薬品メーカーへの変更が可能になるなど、変更不可の指示が少なくなってきております。
 江戸川区でも、直接、区民に対して医療費削減のお願いを行う事になり、その書式や通達方法を江戸川区薬剤師会と協議してきました。 平成24年よりすでに3回行っており、その反響は大きく、患者さんから処方医に対して直接ジェネリック医薬品の使用を依頼するケースや、院内にジェネリック医薬品が無い場合には、院外処方せんの発行を依頼して頂いているケースも多くなってきている状況です。

全国健康保険協会(協会けんぽ)ジェネリック医薬品使用促進の取り組み

全国健康保険協会 徳島支部

1.徳島支部の現状

 協会けんぽ徳島支部におけるジェネリック医薬品使用割合は、協会けんぽ設立当初より全国最下位の状況が続いており、平成 30 年 10 月時点で 69.4%と、全国平均の 77.5%から約 8.1 ポイント下回っている状況です。

img03.jpg

 徳島支部のジェネリック医薬品使用割合を年齢階級別に見ますと、0-4 歳を除くすべての階級で全国平均を下回っており、特に 10-34 歳の若年層で約-10 ポイントの大きな開きがあります。最大差は15-19 歳の階級で-13 ポイント差となっています。
 薬効分類別では、呼吸器官用薬以外の薬効で全国平均を下回っており、ジェネリック医薬品使用数量に占める割合の高い中枢神経系用薬で-13.2 ポイント、循環器官用薬で-7.5 ポイント、消化器官用薬で-5 ポイントと影響が大きくなっています。特に外皮用薬では-13.5 ポイントと大きく下回っている状況です。

img04 (1).jpg

img05.jpg

2.徳島支部におけるこれまでの取り組み

 このような状況から、徳島支部では平成 28 年度調査研究事業として、ジェネリック医薬品使用割合が全国 2 位の鹿児島支部加入者と全国最下位の徳島支部加入者に対しアンケート方式による意識調査を実施いたしました。徳島支部加入者においては鹿児島支部加入者と比較して、病院や診療所、薬局でジェネリック医薬品について説明を受けたことがあると答えた割合に-12.9 ポイントの差がみられました。また、ジェネリック医薬品に変更したきっかけを尋ねたところ、徳島支部加入者、鹿児島支部加入者ともに、約 8 割の方が医師、薬剤師など医療提供側からの働きかけによることがわかりました。

img06 (1).jpg

徳島支部ではこの点に着目し、平成 29 年 2 月より医療機関、調剤薬局への訪問によるジェネリック医薬品使用促進勧奨事業を開始いたしました。平成 31 年 3 月時点で 176 医療機関、202 調剤薬局(再訪問を含む)の訪問勧奨を実施しており、訪問の際には提供資料として協会けんぽ本部作成の「ジェネリック医薬品に関するお知らせ」の配付を行っております。こちらは協会けんぽのレセプト情報を基に、医療機関、調剤薬局ごとのジェネリック医薬品の使用状況を、人数、数量、金額、薬効分類別などの項目別に表した内容となっており、自機関では把握しにくい部分について、保険者から情報提供を行うことができるツールとなっています。
 また、これらの訪問勧奨事業に加えて、県内で調剤薬局をチェーン展開している薬局経営者様に対して、ジェネリック医薬品の更なる使用促進について協力依頼を実施いたしました。加入者への意識調査の結果から、ジェネリック医薬品への変更のきっかけについては、医療提供側、中でも薬剤師からの働きかけが約 6 割を占めており、ジェネリック医薬品使用促進における重要なファクターであることから、多店舗薬局経営者のご協力は不可欠なものであると考えております。
 加入者への働きかけでは、協会けんぽにおいて年 2 回実施しております「ジェネリック医薬品の軽減額通知サービス」のほか、健康保険委員向け事務説明会でのセミナー開催や、健康イベントでの啓発活動など、機会をとらえてジェネリック医薬品使用促進に関する情報発信を行っております。また徳島県のジェネリック医薬品使用割合が全国最下位であることを知っていただくため、社用車へのマグネットシートの貼付や、路線バスへの看板広告など、さまざまな広告媒体を活用した啓発活動を実施しております。

img07.jpg

3.関係団体との連携した取り組みについて

 徳島県におきましては、平成 30 年度に後発医薬品使用促進重点地域に選定されたことから、保険者単独の取り組みだけではなく、徳島県全体での取り組みが進んでいます。
 徳島県では県民および医療関係者がジェネリック医薬品への理解を深め、安心して使用できるよう徳島県後発医薬品適正使用協議会を設置しており、協会けんぽ徳島支部長も委員として参画しています。
 平成 30 年度には後発医薬品採用品リストを活用した徳島県版フォーミュラリーマニュアルの作成や、徳島県内の学生からデザインを公募した徳島県ジェネリック医薬品応援キャラクターの作成、平成 31年 3 月からはジェネリック医薬品の使用促進にかかる「薬局」「事業者」の認証・登録制度がスタートするなど、医療提供側、県民双方に向けたさまざまな取り組みを実施しています。
 協会けんぽ徳島支部においても、平成 31 年 3 月に「ジェネリック医薬品に関するお知らせ」の県内医療機関、調剤薬局への送付事業を実施した際に、徳島県保健福祉部薬務課と連携し、徳島県保健福祉部長名での後発医薬品使用促進にかかる協力依頼文書を同封いたしました。また医療機関、調剤薬局への訪問勧奨事業の際には、徳島県医師会、徳島県薬剤師会等のご協力を得ながら、徳島県ならびに徳島県保険者協議会、徳島県国民健康保険団体連合会、健康保険組合連合会徳島連合会等の保険者団体と連携して実施するなど、「オール徳島」での取り組みを進めております。
 2020 年 9 月までにジェネリック医薬品使用割合 80%という目標を達成するために、日本ジェネリック製薬協会および会員の皆様方には更なるご支援を賜りますよう何卒お願い申し上げます。

 

PDFでご覧になる方はこちら