八尾市におけるジェネリック医薬品使用促進事業について
八尾市保健所保健企画課
はじめに
八尾市は、「健康づくりの推進」を市政運営における重点取り組みの一つとしており、「みんなの健康をみんなで守る 市民が主役の健康づくり」を基本理念とし、みんなで行動することによって、地域全体が健康になる社会をめざしています。
平成30(2018)年4月、八尾市は中核市に移行し、保健所を設置すると共に、薬局の許可等、薬事関係の権限の一部が大阪府から移譲されました。これを機に、「市民主役の健康づくり」を進めるための事業の一環として、また、大阪府の後発医薬品安心使用促進事業(国の重点地域使用促進強化事業)のモデル事業として、市民及び市内の医療関係者にジェネリック医薬品を安心して使用していただくための取り組みを行うことになりました。
現状と目標
八尾市は、八尾市国民健康保険第2期データヘルス計画(2018 ~ 2023年度)において、ジェネリック医薬品の使用割合目標を80%としていますが、平成30年末時点の使用割合は72.7% ※ です。
※厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向 ~平成29年度版~」より
取り組み
1. 市民を対象にした啓発事業・意識調査
八尾市薬剤師会の協力を得て、市の施設(特に市内11か所にある出張所等)を活用して、市民がジェネリック医薬品に対する理解を深め、安心して使用していただくためのイベントや講習会等の啓発を行いました。
1.地域の健康祭り(ブース出展)
2.地域のがん検診・特定健診(待ち時間を活用した意識調査)
3.高齢者給食会での啓発
4.八尾市主催のイベント
●健康まちづくり宣言記念式典(ブース出展)
●10館合同コミセン祭り(ブース出展)
●市民公開講座「ジェネリック医薬品を知ろう!」(八尾市立病院と共同開催)
日時:平成31年3月9日(土)午後2時~ 4時
会場:八尾市立病院 北館5階 大会議室
内容:(1)八尾市におけるジェネリック医薬品使用促進のための取り組みについて 八尾市保健所
(2)八尾市立病院におけるジェネリック医薬品の使用状況 八尾市立病院
(3)保険薬局を利用しよう! 大阪府薬剤師会/八尾市薬剤師会
(4)ジェネリック医薬品使用が何故推進されるのか? 大阪府病院薬剤師会
5.関係団体主催のイベント
消費者大会、健康・医療・福祉展(ブース出展)
6.その他
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- ●ジェネリック医薬品差額通知事業(国保所管課実施事業に、薬事所管課が対象医薬品の選定及び抽出条件の設定に協力し、より実効性のある事業を実施)
- ●FMちゃお「情報プラザやお」に出演
- ●複合商業施設「アリオ八尾」に啓発ブース設置
- ●市政だよりに啓発記事掲載
- ●ジェネリック医薬品希望メッセージ入りの保険証ケースを配布
上記イベント等に併せて、市民の意識調査を行ったところ、
- ●ジェネリック医薬品は95.6%の方に認知されていました。
- ●ジェネリック医薬品を「使いたい」との回答割合は62.0%である一方、「場合によっては使いたくない」、「使いたくない」との回答割合は合わせて19.8%でした。
(調査期間:2018/7/21 ~ 11/18まで。回答数:735)
2. 市内病院におけるジェネリック医薬品の採用状況調査について
市内の医療機関又は薬局において、ジェネリック医薬品を採用する際の参考としていただくことを目的として、市内の病院において採用されているジェネリック医薬品の品目リストをまとめました。
このリストは、八尾市内の全病院から平成30年11月1日現在で採用しているジェネリック医薬品リストの提供を受け、取りまとめたもので、内用薬、外用薬、注射薬、歯科用の別に病院名を公表したもの(図1参照)を八尾市のホームページに掲載しています。
https://www.city.yao.osaka.jp/0000046711.html
3. 地域の薬局で調剤された医薬品情報の共有
院外処方せんでは、薬を「一般名」で記載される事が多くなっていますが、この場合、処方した医師から、実際患者さんに調剤された医薬品の銘柄や剤型が分かりづらいとの声があがっています。そこで、お薬手帳を患者さんと薬局・医療機関との簡易の“連絡帳”として活用することで、処方医に患者さんに調剤された医薬品の情報が届きやすくするよう、図2のリーフレットを用いて啓発を行いました。
4. 市内に勤務する薬剤師を対象にした調査
八尾市内に勤務する薬剤師(病院、薬局)を対象にジェネリック医薬品の調剤実態を調査した結果、以下のことが分かりました。
- ●薬剤師がジェネリック医薬品を選択する際に、重視する情報は、「安全性」>「製剤品質」>「有効性」>「流通」>「価格」の順でした。
- ●ジェネリック医薬品の情報源として活用しているものは、「製薬関連企業からの情報」>「公的機関からの情報」>「学術情報」の順でした。
- ●フォーミュラリを「よく知っている」と回答した割合は6.0%、「知っている」は28.9%、「知らない」は59.0%でした。
(調査期間:2018/11/9 ~ 12/21まで。回答数:166)
5. 懇話会の設置
ジェネリック医薬品の安心使用を促進するための方策を検討するために、関係者から意見の聴取を行う目的で、八尾市医師会、歯科医師会、薬剤師会、八尾市立病院、八尾市保健所の代表者からなる「八尾市医薬品適正使用に関する懇話会」(以下「懇話会」という。)を設置しました。
懇話会では、事務局から取り組み実績についての報告を行うとともに、今後の事業展開について様々なご意見をいただく予定です。
考察と今後の取り組み
<市民啓発事業>
薬事所管課が地域の薬剤師会、国保所管課等行政の関係部署と密接に連携して事業を進めることで、市民にわかりやすく、親しみやすい啓発を展開できました。また、関係者(市の他部局や関係団体のスタッフ)にもジェネリック医薬品使用促進の意義への理解が深まったように思います。
今後さらに、患者が安心してジェネリック医薬品を使用するためには、引き続き市民啓発が必要ですので、関係部署や関係団体と連携しながら、取り組んでいきたいと考えています。
<ジェネリック医薬品採用状況調査>
メーカー数、品目数ともに膨大な中からジェネリック医薬品を選択する医療機関、薬局の負担を軽減するために、2018年度まとめた市内の病院における採用ジェネリック医薬品のリストを定期的に更新し、医療機関等に周知していく予定です。
<お薬手帳の活用>
お薬手帳を患者さん自身の健康管理に役立てるだけではなく、薬局・医療機関との間の”連絡帳”として活用していただけるよう、引き続き啓発を行う予定です。
<更なる取り組み~フォーミュラリ>
近年、患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用方針である「フォーミュラリ」がジェネリック医薬品の更なる有効活用手段になり得るということで注目されています。国においても、フォーミュラリについて議論されていますので、その内容や、「懇話会」等における関係者の意見を踏まえ、取り組み方を検討する予定です。
まずは、関係者にフォーミュラリを知っていただく機会を設ける予定です。(既に、市内の薬剤師を対象に研修会を開催しました。日にち:令和元年7月21日、講師:聖マリアンナ医科大学 客員教授 増原 慶壮先生)
<最後に>
市民に最も身近な自治体として、今後も地域の実情を踏まえながら、市民及び市内の医療関係者にジェネリック医薬品を安心して使用していただくための取り組みを進めていきたいと考えています。