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改正薬機法の成立でジェネリックビジネス変革の幕が開く  

Monthlyミクス編集部 特報チームデスク
望月 英梨

 いよいよ衆院厚生労働委員会で、改正医薬品医療機器等法案(改正薬機法案)の審議がスタートした。11月中にも成立する見通しだ。改正薬機法のメニューには、先駆け審査指定制度と条件付き早期承認制度の法制化や、虚偽・誇大広告が判明した企業に科す課徴金や責任役員の変更命令などが並ぶ。医薬品・医療機器をより安全に、迅速・効率的に提供することを柱とした制度の見直しだ。
 ただ、ここで注目したいのは、もう一つの焦点である薬剤師・薬局の職能だ。改正薬機法案では、「薬剤師が調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の服薬状況を把握し、服薬指導を行う義務」を法制化する。“特定機能”として、入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる「地域連携薬局」と、がんと専門的な薬学管理に他医療機関と連携して対応できる「専門医療機関連携薬局」の知事認定制度も導入する。すでに医療機関では“特定機能病院”がこれの薬局版ともいえる。これまで薬局はひとつのカテゴリーしかなく、地域住民や患者にとって、薬局の機能を認識することが難しかった。標榜を可能にすることで、患者や地域住民が自身に適した薬局の選択を後押しする。
 厚労省が描くのは、OTCや健康食品を含め、医薬品の一元的な把握をし、かかりつけ医、かかりつけ歯科医などと連携し、地域住民に貢献する薬剤師・薬局の姿だ。
 実はこの改革、待ったなしの状況にある。2022年に団塊世代が後期高齢者に突入し、急速な高齢化が進むなかで、地域医療の現場ではポリファーマシーや残薬など医薬品をめぐる問題は顕在化し始めている。ミクス編集部が医師600人を対象に行った調査でも、医師の抱える課題トップに「ポリファーマシー」があがっている。高齢化に伴って、複数の医療機関を受診する患者が増加するなかで、服用薬の一元的・継続的な管理へのニーズがさらに高まることが想定される。
 もう一つ見逃せないのが、一気に人口減少へと歩む地域が少なからずある点だ。厚労省は、「医師の働き方改革」と銘打ち、タスクシフト/シェアリングの議論も進む。こうしたなかで、在宅医療などで、「医療・介護・保健・福祉」に携わる薬局への期待は大きい。一方で、患者にとってメリットを実感できないなどの批判が制度部会の場でも、露わとなっていた。
 改正薬機法案では、これまで“処方箋枚数”の獲得で成長してきた薬剤師・薬局の姿をいわゆる“サービスの質”で集患する姿へと転換を求める。特に期待を集めるのが、患者の医薬品情報の一元的・継続的な管理で、重複投薬や相互作用を防ぐ、地域における医薬品適正使用のハブになることだろう。当然のことながら、患者や地域住民に対して、医薬品の正しい知識を持ってもらえるよう発信能力を高めることも重要になる。
 厚生労働省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定。“対物業務”から“対人業務“へとシフトすることで、「患者本位の医薬分業」に構造転換する必要性を打ち出した。16年度調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料を新設、18年度改定では、地域医療への貢献について実績要件を課した「地域支援体制加算」を新設するなど一貫した施策を敷いてきた。20年度改定でも、対物業務の象徴でもある調剤料の引下げが議論の焦点となっている。すべての政策がかかりつけ薬剤師の普及にアクセルを踏み込んだも
のと言える。こうしたなかで改正される薬機法は、強烈なメッセージを放っている。
 地域での医薬品をめぐる情報連携が進むなかで、地域における標準治療を確立する動きも強まることが想定される。そのなかには、地域フォーミュラリーの議論も含まれるだろう。薬剤師・薬局の姿が変わるなかで、ジェネリックメーカー各社のビジネスモデルも変革が迫られる。各社は、その時と、その先に備え、いまから企業の経営理念や経営ビジョンの練り直しを進めるべきだ。その際に役立つのは、日本ジェネリック製薬協会の策定した「次世代産業ビジョン」に他ならない。改正薬機法の成立でジェネリックビジネス変革の幕が開く。

 

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