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月刊JGAニュース

原薬の品質確保や安定供給に関する現状と課題  

日本医薬品原薬工業会

会長 富田純弘


現在、日本医薬品原薬工業会の会長を拝命している立場から、原薬の品質確保や安定供給に関する現状と課題について寄稿させていただきます。

1 日本医薬品原薬工業会のご紹介


 日本医薬品原薬工業会(以下、原薬工)は、原薬製造業者を主体にして、製薬メーカーや大手化学メーカーを含む大中小の製造業者が会員会社として加盟している原薬業界の団体です。1975 年に 22 社で発足し、現在の会員会社の数は 101 社となりました。原薬工の目的は、医薬品の製造原料である原薬に関する法的諸問題の調査研究、並びに医薬品原薬の有効性、安全性及び品質確保を図るために、原薬 GMP をはじめとした調査研究を通じて原薬の品質保証体制の確立を目指すと共に、国民の健康の保持増進及び福祉の向上に貢献することを目的とします。
 この目的を達成するために、原薬工内に法規委員会、GMP 委員会、総務経済委員会という 3 つの委員会を組織し活動しています。法規委員会では、薬機法並びに関連法規に関する調査・研究を行なっており、GMP 委員会では GMP の適切な運用推進を目的として、原薬 GMP に関する諸課題の調査・究明とその対応を行なっています。また、総務経済委員会では、研修懇談会の企画・実施や当会運営の諸問題の検討を行い原薬工の医薬品産業会でのステータス存在感を高めるべく活動をしています。これらの委員会において、会員企業同士で技術的な情報の交換や相互研鑽を行なっており、最近の活動としては、PMDA ジェネリック医薬品等審査部にご指導いただきながら CTD 第 3 部( 3.2.S 項)のモックアップ作成等を行っております。
 医薬品原薬に関わる業を営む日本国内法人であれば、業種・規模を問わずご加入いただけますので、ご興味がありましたら原薬工のホームページ(http://www.jbpma.gr.jp/)をご確認いただけますようよろしくお願いいたします。
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2 原薬の品質確保や安定供給に関する現状と課題


 医薬品を取り巻く環境は大きく変化し厳しさを増しています。国は医療の質を落とすことなく医療費を抑制し、全ての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができる体制を維持するために、ジェネリック医薬品の使用促進や薬価引き下げといった様々な施策を行ってきました。この流れの中で原薬においても、品質を確保した上でのコストダウンが必要となっております。
 さらに、最近は安定供給に関する問題もクローズアップされています。抗菌薬等の比較的安価な医療用医薬品については、採算性等の関係から、中国等の数社に原薬やその出発物質・中間体の製造が集中している場合があり、実際に医療上重要な医薬品の供給が長期に渡り滞った事例が発生しました。このような事態を受けて、本年 3 月に厚生労働省医政局の主導で「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」が発足し、安定確保が求められる医薬品に関する考え方や具体的な方策などについて議論されています。この中では、安定供給に関する課題として、中国等の特定国の少数の会社に製造が集中していること、現地の環境規制対策等により生産コストが上昇していること、品質基準に対する対応の遅れや追加コストが発生していること、複数の国にサプライチェーンがまたがっていること等が挙げられていました。また、供給不安が発生した事案について、その原因を調査した結果、(1)品質問題(30%)、(2)需要増への対応(29%)、(3)GMP 基準等への対応の遅れ(21%)に起因するものが上位を占めていました。これは、原薬に限った話ではありませんが、原薬の安定供給が医薬品の安定供給に直結する場合も多く、我々原薬製造業者は、品質を最優先しながら、安定供給とコスト削減という難しい課題を確実にクリアしていく必要があると考えています。安定供給に影響を与えるファクターは数多くあり、国内、海外を問わず規制当局から GMP上の不備等を指摘された場合は、安定供給に支障をきたす可能性があります。また、年々レベルが高くなる規制を遵守するのが困難となった旧来の製造設備においては、設備更新等の投資に見合う利益が見込めず、製造の継続が不可能となる場合もあります。また、安価な原薬、例えば、最低薬価の医薬品や基礎的医薬品に用いられる原薬であっても、高価な原薬であっても、原薬製造業者として遵守しなければならない規制レベルは全く同じであるため、安価な原薬ほど規制対応コストのカバーが困難となる場合も想定されます。このように様々な要因が存在しながらも、我々原薬製造業者は、高品質な原薬を安定供給し続けなければなりません。このため、日々アップデートされる様々な規制を的確に把握し遵守し、社会や医療現場の動向も正確に把握した上で原薬製造を継続していかなければならないと考えております。
 資源が乏しい日本にとって、付加価値の高い製品を製造する「医薬品産業」を維持し発展させることは国益にも資する重要な事項であり、また、言うまでもなく医薬品は世界の人々の健康に貢献する崇高で価値の高いものです。この医薬品産業の一端として、原薬製造は、重要な役割と責任を担っていると認識しております。これからも、「品質確保」と「安定供給」をキーワードに純良な原薬を供給できるよう原薬製造業者一丸となって医薬品産業に貢献していきたいと考えています。

以上

 

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