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月刊JGAニュース

ジェネリック(後発)医薬品の役割と期待するところ  ―薬剤師の視点から―  

講師:公益社団法人 日本薬剤師会 会長
山本 信夫 先生

 昨今ジェネリック医薬品の安定供給や品質管理上の問題により、医療関係者や国民の皆様に多大なご迷惑をお掛けしている事例が頻繁に発生している事態を重く受けとめ、理事会において対策を検討した結果、協会の対応の一つとして、会員会社向けに特別講演会を実施することといたしました。
 特別講演会の講師として、公益社団法人日本薬剤師会会長山本信夫先生をお迎えし、「ジェネリック(後発)医薬品の役割と期待するところ ―薬剤師の視点から―」と題し、昨今の状況に鑑みた忌憚のない薬剤師としての現場のご意見とともに、ジェネリック医薬品に期待することをお話しをいただきました。
 講演は会場での聴講に加えWEB配信でも開催され、会場は約30名、WEBは約80名と100名を超える参加となりました。各会社の社長・幹部社員、総括製造販売責任者、品質管理責任者など安定供給に係る方々が多く参加いたしました。


 本稿では、当日の山本会長のご講演および、同席いただきました公益社団法人日本薬剤師会専務理事磯部総一郎先生から頂戴しましたご意見について、概要を紹介いたします。当日は、日本ジェネリック製薬協会会長澤井光郎より本会の趣旨説明の上、講演がスタートいたしました。

●気の緩みに自戒を、薬剤師の疑問や期待に明確な答えを

 冒頭、本編へ入る前にいくつかの疑問やご指摘を頂戴しました。まず、数量シェア80%の目標達成時期となる中で、「気の緩み」があるのではないかという指摘です。これまで、ジェネリック医薬品使用促進のために国から様々な施策が打たれ、上昇気流に乗り、凧のようにスーっと業績が上昇していく中で、気の緩みが発生したことが、昨今のような安定供給不安の発生の一因になっているのではないか、ということです。また、総括製造販売責任者が薬剤師に限定されていることにも触れられ、会社の中でその意味を理解し、大切にされているかが疑問である、見えないということでした。
 また、ジェネリック医薬品に対する様々な疑問について、メーカーが的確にこたえられているかというと決して満足いくものではなく、特に製造会社が違う製品を販売時に起こった供給不安に対し、「製造が違う会社だからわからない」など、他人事のように回答することが見受けられるため、自分のこととして真摯に回答してほしい旨指摘をいただきました。

●せっかくジェネリック医薬品に変更した患者さんの薬剤の供給停止はダメージ大

 患者さんがジェネリック医薬品に変更する際、何もしなければ変わらず、薬剤師の皆様の説明により、患者さんは納得してジェネリック医薬品を使用されます。その際、多くの薬剤師は、どこのものがいいかというのを品質や安定供給の観点を判断され、「継続してこの薬を使ってほしい」という想いを持たれています。
 しかし、せっかく納得してジェネリック医薬品を使用してくれたにもかかわらず、そこで供給不安が起こり、薬がないとなると、患者さんは「やはり品質が悪いのか」と、二度とジェネリック医薬品を使用してくれなくなるとのことです。
 供給不安は、患者さんの薬を再度変えるという作業的負担だけでなく、薬剤師と患者さんの信頼関係にまで影響を及ぼすということも、我々は理解しておかなければなりません。

●生命関連商品を製造している気概・誇り・矜持を。真のジェネリックを目指して

 生命関連商品を製造している気概や誇りや矜持をきちんと持ってほしいと指摘をいただきました。また、「あえて、近未来のジェネリック医薬品への期待を込めたコメントとして、超高齢社会の医療費の抑制は国家的な課題である。一方で、国民皆保険制度の維持には先発医薬品だけでは賄いきれない。まさに、ジェネリック医薬品というのは国民の財産だと思う。そのため、先発医薬品の模倣ではなく、明らかに工夫された財産となるような、『真のジェネリック医薬品』になれるように、国民の皆さんの健康に貢献できるような薬を常に出し続ける方向で安定供給に努めてほしい」との要望をいただきました。

 

【磯部専務理事コメント】

●第三者的な観点からの点検を

 品質に関する自己点検には限界がある。これまでの慣習など、悪いことをしているというつもりではなくても、結果的に品質管理上重大な問題であることがある。このような状況は、自己点検で改善することは難しい。その中で、第三者(他者)の目を入れていくのは非常に大事なことではないかと思う。ぜひ、第三者(他者)の目で製造現場を見てもらい、自分たちが、気づかなかったことがあるということに気づいていただいて改善をしていただきたいと、最近特に思う。こういうもので足をすくわれて、ジェネリック医薬品に対する信頼が損なわれることがないように、もう一度気を引き締めていただきたい。


 まだまだ書ききれない部分はありますが、上記のような内容をはじめ様々なご意見・ご指摘を頂戴いたしました。このご意見は参加者だけでなく各会員会社内で共有する事は勿論、ジェネリック医薬品を扱う全てのメーカーが、安定供給体制の更なる強固な体制の確立に向けて、一層努力していく「覚悟」が必要であると思います。

(取材:日本ジェネリック製薬協会 広報委員会)
 

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