EN

月刊JGAニュース

薬価改定やコロナで2020年代は厳しい幕開け  

株式会社じほう 報道局日刊薬業編集部
大塚 達也

 昨年10月、今年4月の薬価改定と新型コロナウイルス感染症に伴う行動様式の変化がジェネリック医薬品業界にも大きな影響を及ぼしている。2020年度上期(4~9月)の各社の業績は減収や減益が目立った。
 専業大手3社の国内実績を見ると、▽日医工(国際会計基準)-売上収益723億2600万円(前年同期比5.9%減)、営業利益16億1200万円(64.4%減)▽沢井製薬(国際会計基準)-売上収益720億9800万円(0.1%増)、営業利益133億9700万円(2.9%減)▽東和薬品-売上高559億1700万円(1.0%増)、営業利益85億4000万円(7.4%減)。沢井製薬と東和薬品は新規追補収載品の寄与や販路拡大などによって増収でしのいだものの、その伸び幅は大きくなかった。近年、順調に売り上げを伸ばしてきたニプロもジェネリック医薬品の売上高が396億6000万円(3.2%減)で成長が滞っている。
 いずれも2度の薬価引き下げや、コロナによる受診・入院の抑制や延期などがマイナスのインパクトになった。
 その他も、オーソライズド・ジェネリックやバイオシミラーといった成長ドライバーを持たない企業のジェネリック事業が軒並み苦戦を強いられる中、日本ジェネリックと長生堂製薬を子会社に持つ日本調剤の医薬品製造販売事業は売上高228億1200万円(8.4%増)、営業利益11億6300万円(0.7%増)と増収増益を達成した。グループ薬局数の増加で内部売上高100億円4100万円(8.5%増)を確保した上で、外部売上高も127億7100万円(8.4%増)と拡大。競合の少ない大型品を狙いに行きながら、自社製造によって利益率も上げるなど収益性向上を目指す戦略によって、苦境においても数字を伸ばした。
 20年度は年間を通して市場規模の大きな先発品のジェネリックが多く初登場するため、薬価改定を見込んでもジェネリック医薬品全体の規模拡大を期待できる年ではあった。ただ、このような「大型ラッシュ」は今後なかなか訪れない。ジェネリック医薬品の数量シェアもほぼ80%近くまできた上に、薬価政策の見通しについても不透明な部分が多く、売り上げを伸ばしながら利益も維持拡大するのは、相当な難題となっている。
 成長のためには、海外事業進出や強化、医薬品に関する技術や知見の他業種への横展開、あるいは新規事業参入など、思い切った投資も視野に入れながら、足元でも競合との差別化のための経営努力や工夫によって実績を固め土台を大きくしていく必要がある。もちろん医薬品産業の社会的使命である安定供給は大前提だが、そもそも、その前提を守り続けるのも容易ではないから大変だ。収束の見えないコロナ禍にも見舞われ、20年代は厳しい幕開けとなってしまった。

 

PDFでご覧になる方はこちら