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経口新型コロナ治療薬の開発から、製薬企業の使命を考えた

株式会社ミクス
ミクス編集部 デスク
望月 英梨

 経口の新型コロナウイルス感染症治療薬の研究開発が注目を集めている。米メルクは10月1日、経口新型コロナ治療薬候補モルヌピラビル第3相臨床試験の中間解析の結果、外来で軽症から中等症の新型コロナ患者に対して、プラセボに比べ、入院や死亡のリスクを約50%低下させたと発表した。同社は、米FDAに対し、緊急使用許可(EUA)の提出を急ぐ考えで、世界各国の規制当局にも承認申請を提出する予定という。試験はグローバルで実施されており、日本も含まれており、国内での動向も注目される。

 「経済的、簡便に安心して飲める経口薬はジグソーパズルの最後の1ピースと我々は考えている。皆さんの安心感が格段に増すのではないか」-。塩野義製薬の手代木功代表取締役社長は9月29日の会見で、こう話した。
 新型コロナをインフルエンザ並みとするためには、経口の新型コロナ治療薬の果たす意義が大きい。一部の患者で急性増悪することなどが取り沙汰されているが、2020年6月以降に新型コロナと診断された人のうち、重症化した割合は約1.6%、50代以下では0.3%という。死亡率も約1.0%にとどまる*。心血管疾患や糖尿病など基礎疾患を有する人や、高齢者など、重症化のリスク因子もわかってきた。一方で、軽症者や無症候者が多いなかで、自宅療養やホテル療養などが求められるケースも多い。病院中心型の医療に慣れきってしまった日本国民にとっては、集中的な医療を受けられないことに対する不安感は強い。 軽症・中等症Ⅰの新型コロナ患者を適応とする抗体カクテル療法などは上市されているが、アナフィラキシーなどの重篤な副作用も知られており、十分な知識を有する医師は限られるのが現状だ。こうした医療資源や薬価の観点からも、経口の新型コロナ治療薬に対する期待は高まっている。一部の著名な医師が個別症例や疫学データに基づいて有効性を主張するイベルメクチンを思い浮かべる方もいるかもしれない。ただ、製造販売元である米メルクは再三にわたり、エビデンスが確立していないことを周知している状況にある。
 経口新型コロナ治療薬の開発は、ファイザー、ロシュ、メルクとグローバルメガファーマが名を連ねる。感染者がゼロになってしまえばビジネスが成り立たない感染症ビジネスはリスクが付きまとうため、巨大な資本力がなければチャレンジを続けるのには難しい。塩野義製薬は、内資系企業として唯一、経口の新型コロナ治療薬の開発に挑戦を続けている。9月27日には、国内臨床第2/3相試験を開始。「国内を最優先で開発」することも明言している。
 社会全体が不安に陥っているなかで、経口で投与できる治療薬が社会に与える安心感は大きい。革新的新薬が社会にもたらす貢献の一端を見て取れることができる。まさに、国民誰もが待ち望むイノベーションといえるのではないか。
 では、ジェネリックメーカーが社会に果たす意義とは何か。私はこれまで、安定供給こそが、ジェネリックメーカーの社会的使命だと思ってきた。では、いまジェネリックメーカーが社会に安心感を与えるために何をすべきか。一つずつ解を見つけるべき時ではないか。

*引用元:厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/000788485.pdf


「医薬品産業ビジョン2021」について

 2021年9月13日に「医薬品産業ビジョン」が策定された。今回は副題に「医療と経済の発展を両立させ、安全安心な暮らしを実現する医薬品産業政策へ」が記載されている。

 「医薬品産業政策が目指すビジョン」の実現を図るため、「革新的創薬」「後発医薬品」「医薬品流通」の3点に焦点を当て「経済安全保障」の視点を加えて、今後の医薬品の産業政策を展開していくものである。(本文P7に記載)

 策定された「医薬品産業ビジョン2021」は医薬品の産業政策を推進していくために、体制の整備と国民に理解して頂く重要性が記載されている。まさに「情報発信」をしていくことは医薬品産業の喫緊の課題で、ジェネリック医薬品を取り扱う企業は「価格以外の医薬品の価値に関わる情報」を医療現場に速やかに「提供」し、広く認知されていく事が強く求められている。そして、医療機関がジェネリック医薬品の採用にあたり、各社の品質確保や安定供給に対する取組みと継続状況が分かるような情報に基づき判断出来るように、積極的な情報の「開示」に取り組むことが求められている。

 またジェネリック医薬品の「品質確保と安定供給」を徹底していく為に、多品種製造の特性を踏まえ、「開発段階」からその取組みを担保し、原薬管理も含めたGMPに基づく「製造管理・品質管理」の徹底を図り、「承認段階」及びGMP適合性調査時からの確認を自ら強化していく必要性も記載されている。
(詳細については本文P11~P14、P25、P27~P28、P30~P31ご参照)

 是非、策定された「医薬品産業ビジョン2021」の内容を、全てご確認を頂き各社様の取組みに生かして頂きたいと考える。

※詳細については以下の厚生労働省のホームページをご覧下さい。
【厚生労働省:「医薬品産業ビジョン2021」の策定について】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20785.html
「医薬品産業ビジョン2021」(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831972.pdf
「医薬品産業ビジョン2021」(本文)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831973.pdf
「医薬品産業ビジョン2021」(資料編)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831974.pdf

 

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