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月刊JGAニュース

供給不安で製薬企業の情報提供のあり方を考えた  

株式会社ミクス
ミクス編集部 デスク
望月 英梨

 「医薬品の供給に関しては、MRから来る情報はいつも不足していると感じています。すでに自社やPMDA のHPに自主回収や供給停止、出荷調整などの情報が掲載されているにもかかわらず、問い合わせをすると、「これから調べます、と言われてしまい、不安に感じる」-。杏林大学医学部付属病院薬剤部の若林進氏は、ミクス本誌 12 月号の対談でこう語った。詳細は本誌に委ねるが、実際、病院薬剤部や保険薬局からはこうした声を多く耳にする。

 小林化工や日医工の行政処分の影響が色濃かった今年上半期と様相は異なり、いまやそれにとどまっているようには見えない。日本ジェネリック製薬協会が会員企業に求めた自主点検を行うよう要請したほか、自治体の無通告査察も増えるなかで、その後に発覚した問題も多い。長生堂製薬は自主点検で発覚した問題を受け、10 月 11 日に徳島県から行政処分を受けた。その後も自主回収が相次いでいる点を見ても、2社の行政処分がいまの供給不安の根本的原因には到底見えない。

 何より、薬剤師や医師が望むのは、医薬品の安定供給だ。代替品は何か、いつから供給がなされるのか。特に処方医と患者に挟まれる薬剤師や、供給に奔走する医薬品卸の状況は厳しさを増している。製薬企業側に一定の責任を求める声があがるのは当然のことだろう。日本保険薬局協会(NPhA)の首藤正一会長(アインホールディングス)も、「最近は患者、応需先の医療機関から薬局の現場が責められる場面が多いが、本来は我々が責められる状況ではない。ずっと対応している現場がかわいそうで経営者として供給側に怒りを感じる」と会見で話している。

 一方で、製薬業界と医療現場の認識には大きなギャップがある。「各社がきちんと情報提供しているという認識だ。これ以上無理だという情報は伝えている」-。日本ジェネリック製薬協会の澤井光郎会長(沢井製薬会長)は 10 月 25 日の会見でこう語った。本誌が病院薬剤部に実施した調査でも、ジェネリックメーカーの情報提供を指摘する声があがっている。詳細は本誌をぜひご覧いただきたいが、ジェネリックメーカーについてMRの情報提供の質や量について尋ねたところ、「十分だ」との回答はゼロだった。「不十分」との回答は 36.7%を占めた。特に、「自主回収などの迅速な情報提供」は 84.4%で最多となっている。

 日本ジェネリック製薬協会は、特設サイト「ジェネリック医薬品に対する信頼の回復に向けた当協会の取組み」で、会員企業の自主回収や供給調整の公表を開始した。ただ、更新頻度は2週間に1度にとどまる。医療従事者は一刻一刻、目の前の患者に対する判断を強いられる。患者の健康を守る責任があるなかで、品質に問題のある可能性があったり、服薬継続が難しかったりする場合には一分一秒、早く知りたいのは当然のことだ。こうした医療従事者の声にいかに耳を傾けるべきか。情報は受け手のニーズに寄り添い、理解されて初めて情報としての価値を発揮する。信頼される企業、業界となるためには、医療現場と製薬業界のギャップを早急に埋める必要がある。

・Monthly ミクス 12 月号:https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=72165&ssl=on
・「ジェネリック医薬品に対する信頼の回復に向けた当協会の取組みについて」
 特設サイト: https://www.jga.gr.jp/effort.html

 

 

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