ロートニッテン株式会社
「ロートニッテン株式会社」の前身の「株式会社日本点眼薬研究所」は、奈良県立医科大学の名誉教授で眼科医でもあった神谷貞義博士が「眼科に必要な点眼剤をひととおり製品化して医療に事欠かないようにしたい」という思いから、1961年に眼科領域に特化した製薬会社として設立されました。以来、「すこやかな視界への挑戦」という理念を掲げ医療機関の皆様や患者様に「PFデラミ容器Ⓡ 1)」を使用した防腐剤無添加点眼薬など「目にやさしい点眼薬」の提供を続けて参りました。一昨年、一層の社業発展を願い「目の健康を守り社会に貢献する」という志を同じくするロート製薬グループの一員となりました。そして昨年「株式会社日本点眼薬研究所」は創業60周年になったこともあり、今年4月から社名を「ロートニッテン株式会社」に変更し、ロート製薬の医療用点眼薬事業の中核として共に歩むことに致しました。歴史ある両社の名前を併せたことで、医療機関の皆様や患者様からは一層の信頼と安心を感じていただけるようになりました。
「ロートニッテン株式会社」として今年から新たなスタートを切ったのですが、近年製薬企業を取り巻く環境は厳しさを増す一方で前途は予断を許さない状況です。さきの後発医薬品の品質問題に始まり、それにより表面化した安定供給の課題、さらに昨年からの中間年での薬価改定による収益の圧迫などは、まさに新生「ロートニッテン」の存在価値を問われるような大きな試練となってきています。品質面の確保の為には信頼性試験に関わる人員を増やさなければなりませんし、安定供給のためには在庫を増やさなければなりません。原材料についても品質面や安定供給などの面から、2社購入や製造設備の充実した会社へ変更をしなくてはなりません。これらはすべてコストのアップにつながります。今年4月のGE薬協の調査では回答したGE薬協会員企業34社の後発医薬品6980品目のうち2325品目(33.3%)が不採算となっていることが分かりました。利益が出るもので補填すれば良いという論理はありますが、利益を赤字補填に回せばその利益は新製品開発や製品改良に回らず医薬品産業が衰退していくことにも結び付きます。
厚労省側も業界にこのような苦境や課題があるということは認識されていて、今後の対応案について検討されるということですが、企業間での生き残りをかけていかに振舞うのかが業界自身として課題です。後発医薬品比率80%を目指した方針を実現するために品目の追加や数量増に対応すべく多くの企業が努力してまいりましたが、それもほぼ実現し、これ以上市場拡大が望めない中で、企業間の過度な競争は自らの体力を消耗し、どの企業も残れない事態に陥る危険性があります。結果的に医療に必要な医薬品の安定供給ができなくなる事態に陥ることになります。GE薬協会員企業も後発医薬品を扱う会社が集まる団体として今後活発な議論を進めていけたらと考えています。
当社は、昨年まとめた中長期ビジョンVision2030で当社にかかわるすべての人々の「Well-Being」を実現するために、ロート製薬のグループ企業として医療用眼科事業全般を担うこととしました。そして事業領域も点眼薬事業からコンタクトレンズや医療機器などに事業の幅を広げることで、患者様や医療機関の皆様のより広い期待にお応えし社会に貢献していき、経営基盤を盤石にしていく予定です。眼科専門メーカーとしてコンプライアンスを遵守し、目に関わる製品を高い品質で安定して供給することで、社会の公器として社会貢献によって当社は持続的な発展を目指したいと考えます。
1):PFデラミ容器Ⓡとは https://www.jga.gr.jp/assets/uploads/2022/880e1c1e812c56905e01dcb28566dfd1d5da1356.pdf