治療と教育
尊敬する人物のひとりに、オデッサの物理教師パーヴェル・ヴィクトール(Павел ВИКТОР)氏がいる。彼は「Две вещи в этой жизни должны быть бесплатными ‒ лечение и обучение(人生で無料であるべき二つのことーそれは治療と教育です)」を信条とし、2010年から自身授業のYouTube配信を開始。2020年12月で全720コマを収録終了した。
何年か前、ある批評文で一部原書にて確認したい箇所があり、フランスの国立図書館サイトを確認してみたところ、なんとデジタル・アーカイヴ化されていた。感動するとともに、日本の国会図書館もこうなってほしいと切に願った。
日本の国会図書館もこうなってほしいと願いに願った数年後の2022年5月19日、待望の国立国会図書館の個人向けデジタル化資料送信サービスがはじまった(https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html)。絶版などの理由で入手困難になった資料など約152万点(著作権者等の申出を受けて、3か月以内に入手困難な状態が解消する蓋然性が高いと当館が認めたものを除く)を、パソコンやスマートフォンで閲覧できるようにするサービスである。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、国立大学図書館は関係者のみの利用に限られ、国会図書館は抽選予約制による入館制限を行った。そんな最中にはじまったこの素晴らしいサービスは、コロナ禍の僥倖、願いが叶った瞬間であった。
人々が安心して健康に暮らすことのできる世の中には、教育と治療が不可欠だ。そのためには開かれた図書館や教室、国民皆保険制度の維持が必要不可欠であろう。その一端を担わせていただいている責任と喜びと共に、これからも尽力していきたい。