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月刊JGAニュース

餅つき  

 子供のころの冬休みの思い出といえば、毎年実家で行われていた餅つきである。私の生まれ育った町は、関東の端の方の田舎で、まだまだ親戚づきあいが色濃く、年末には親戚がたくさん集まり早朝から半日かけて餅をついて、お正月への準備を行うのが恒例行事だった。もちろん、杵と臼を使った餅つき大会である。

 朝の早い時間からみんなが集まり大きな声を出して一生懸命に餅をつく姿は、大人になった今でも強く印象に残っている。そんな中で、子供だった私の役目は2つ。1つ目は、四角い木の枠に、つきたての餅を手で伸ばし大きなのし餅をつくること。経験のある方なら分かってもらえると思うが、これが意外とコツがいる。つきたて熱々の餅を素手で角まで伸ばし、さらに均等な厚さの正方形の形に整えるのはなかなか難しい。小さなころから毎年鍛えられた私は、小学生になった頃には周りの大人に褒められる程度にのし餅が作れるようになった。

 2つ目は、杵でつく前にモチ米の蒸し加減をチェックすること。つまりはつまみ食いである。かまどで炊いた蒸したてのモチ米の味はとても美味しく、チェックと言いながら何回も食べていた。私個人的には、出来上がった餅よりこっちの方が好きだった。

 そんな思い出深い餅つきも、つき手がいないのと高齢化のせいでもう行われていない。帰省すると電気餅つき機でついたお餅で正月を迎えるここ数年である。高齢化は医療費の増加など医薬品業界に関連する問題の一つでもあるが、こういった昔からの風習が地域から少しずつ減っていくのも寂しいことである。なにより、あのつまみ食いの美味しさを次世代の子供たちが味わえないのはかわいそうだなと思う。

 医療費だけでなくいろいろと暗い話題の多いここ数年だが、年が明けて2023年。問題を少しでも前進・解決し「今年はいい年だった!」と振り返ることができる明るい1年になることを願っている。

(M.N)
 

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