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月刊JGAニュース

未来のこどもたちのために  

 2023年4月23日、東京国際フォーラムおよび丸の内・有楽町エリアで開催された第31回日本医学会総会2023東京に、当協会が参加した。
 「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」をメインテーマとして、医師、その他の医療従事者、研究者、学生、そして一般市民が参加する会場内には、大人同士だけではなく親子での参加も多くみられた。子供向けワークショップも充実しており、未来を担う子供たちが、医療への関心を示す姿がみられた。
 トマス・ロバート・マルサスは『人口論』のなかで、人口増加の必然の帰結として、人類には陰鬱な未来しか有り得ないとの経済的予言をもたらした。マルサスによれば、人口は幾何級数的に、二、四、八、十六倍といった具合に増えていくのに対して、食糧の供給の伸びは、せいぜい算術級数的、つまり二、三、四、五倍といった程度にしか増えていかないから、当然、ここには破綻が生ずる。道徳的もしくは理知的な自制による人口調整が為されなければ、飢饉、戦争、疫病といった災厄が、人類全体の破滅を救う恩寵として望まれるようにさえなるとした。
 そんな予言とは逆に、我が国は、国際的に例を見ない少子超高齢社会を迎えている。戦後日本の高度経済成長に支えられた医学・医療により、現在それを支えるべき医療、介護の経済基盤は危機に瀕している。人生100年時代と表現される新たなステージにある我が国にとって健康長寿に貢献する医療技術開発は最重要課題の一つだ。医療技術の基盤になるのは基礎医学を包含する基礎科学であり、その更なる振興が必要だ。
 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査2021」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001027.000000120.html)によれば、コロナ禍において「勉強する気持ちがわかない」の肯定率が2019年45.1%から2021年54.3%に増
加するなど、子供たちの学習意欲が低下する傾向が明らかになったそうだ。
 この結果を受け、暗澹たる気持ちになったが、その気持ちは医学会総会に参加する子供たちの姿を見て塗り替えられた。クイズのプレートをどんどん捲りながら「少ない」と文句を言う子供。『鷹の爪団のジェネリック都市伝説』の動画の前を離れず、両親を困らせる子供。健康長寿に貢献する医療技術開発は、子供たちがきっと導いてくれるだろう。そして子供たちの幸福な社会実現を期待しながら、これからも子供たちを大切に支えていきたい。

(Y.S)
 

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