GE業界再編、議論が活発に 注目されるコンソーシアム方式
武見敬三厚生労働相は7月4日、主な後発医薬品企業13社の経営者を集めて、1成分5社程度を目安に業界再編を要請した。再編の手法としては、合併や買収の他にも企業間連携などさまざまなものが考えられるものの、業界再編への関心は高まっている。その中でも注目されるのが「コンソーシアム」方式だ。
厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書では、少量多品目生産の現状を打破するために、一定程度の大規模生産体制を構築する必要性を指摘している。その再編手法の一つに挙げているのがコンソーシアム方式だ。これは各社が同一成分の薬を別々の屋号で製造販売している場合に、複数社で新たに合弁会社を立ち上げて効率化するという考え方だ。具体的には、合弁会社が統一屋号の製品で承認を取得し、合弁に参加する1社の工場でその薬を製造する。さらに合弁会社が参加企業に販売委託する形で、統一屋号製品を販売するという構想だ。
検討会の事務局を務める医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、5月25日の日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会学術大会でコンソーシアム方式を紹介。「屋号を統一して発売すれば、生産効率や生産能力を高められる」と呼びかけた。
●「コンソーシアムは大手を利するだけ」
業界からは早速、コンソーシアムの枠組みについて予想する声が出ている。ある中堅後発品企業の経営者は日刊薬業に対し、「大手同士が手を組むのは考えにくい。大手と中堅の組み合わせ、例えば沢井製薬と中小の数社だったり、または東和薬品を中心に数社、あるいはもともと委受託関係があった会社同士で組む場合もあり得るだろう」と述べる。
一方、難色を示す声もある。準大手の後発品企業関係者は取材に対し、「コンソーシアムに参加するメリットが分からない」と語る。「単にコンソーシアムの核となる大手企業が一手に製造を引き受け、大手を利するだけの結果になるのではないか」と不信感をあらわにする。
こうした懸念を背景に、コンソーシアム方式とは別のアイデアが製薬業界内で出ている。沢井は、他社もメリットが感じられるような構想を打ち出した。沢井案は、自社の生産余力を活用し、自社と同一成分を持つ他社からの生産依頼を不採算品も含めて引き受ける。他社が撤退する品目の供給量と同量を自社で増産し、品目統合の受け皿になる策だ。沢井案は業界内で反響を呼んでおり、すでに「他社から代替してほしいという依頼が来ている」(澤井光郎会長)という。
増産の時期も焦点になる。沢井によると、コンソーシアム方式では利害関係者が多すぎて、合弁会社ができるまでに1年間以上かかり、スピーディーな対応を取れないという。一方の沢井案の場合、コンソーシアム方式と同様に事前に公正取引委員会などの調整も必要になるものの、増産は早く進むとみられる。
●問われる各社の判断
2023年9月の薬価調査によると、後発品はすでに数量シェア80%を達成した。今後の伸びしろは限られており、いわば成長産業から成熟産業に移行している段階だ。そうした中、後発品業界の経営戦略にも変化が出ている。大原薬品工業やあすか製薬は、主力事業を新薬事業にシフトしている。第一三共エスファは調剤薬局チェーンの傘下に移行。武田テバファーマは親会社が日本の後発品事業を売却する方針を明かしている。
厚労省は今後、5年程度の集中期間を設定し、金融財政支援も行いながら後発品業界の構造改革を強力に推し進める方針だ。武見厚労相が示した再編の目安に向け、政府は今後、具体的な誘導策を検討する方針。後発品各社は安定供給を前提に自らの特徴を生かしつつ、再編にどう臨むのかが問われている。