EN

月刊JGAニュース

ネオクリティケア製薬が破産手続き開始 自主回収から業績悪化、供給に影響も  

株式会社じほう
報道局 海老沢 岳 氏

 輸液・注射剤をメインに扱うネオクリティケア製薬(本社=神奈川県厚木市)が9月5日に東京地裁に申し立てを行い、破産手続きが始まった。同社は2020年に自社工場の製造トラブルから大規模な自主回収を起こしており、資金繰りが悪化。このほど事業の継続を断念した。同社は複数社から製造を受託しているため、委託元企業では破産のあおりを受け関連製品の限定出荷がすでに始まっている。
 同社は1941年に創業し、47年に小林製薬(東証プライム上場の小林製薬とは無関係)を設立。注射剤の製造に強みを持つ。2005年の薬事法改正で受託製造事業を拡大し、業績を伸ばした。一方で、06年にはSMOのアイロムの子会社に、11年には印ルピン傘下の共和薬品工業の子会社に、さらに19年にはアラブ首長国連邦のネオファーマ傘下のneo ALAの子会社へと、親会社が目まぐるしく変わった。
 そうした中、20年にはソフトバッグ製造ラインの環境モニタリング試験で不備が判明。同ラインでの製造を3カ月間停止し、他社からの受託製造品を含めて約50品目の自主回収を行った。この自主回収でソフトバッグ製剤が他社の代替品に切り替わり、委託元の企業も離れて収益が悪化。19年度から6期連続で最終赤字を出していた。

○従業員に破産と解雇通告
 同社によると、8日午前に従業員向けの説明会を開き、その場で会社の破産と解雇を通告した。帝国データバンクによると、同社の負債は25年3月末時点で約44億7100万円。
 ネオクリティケアに製造を委託している製薬企業の関係者は日刊薬業の取材に応じ、「8月中旬からすでに破産の予兆はあった」と証言した。この関係者によると8月中旬、厚木市にあるネオクリティケアの本社工場で、注射剤に使う「製薬用水」を供給できないトラブルが発生。機械メーカーに修理を依頼したが、資金繰りの悪化を知ってか、修理費の前払いを条件に出され、機械を修理することができず、製造を再開できなかったという。
 さらに工員も離職し、修理に当たる社員も見つからない状態だった。ネオクリティケアをよく知る複数の社外関係者からも、給料の未払いや遅延、離職が発生していたとの声が聞かれる。

○破産の影響で限定出荷も
 破産による他社への影響や、医薬品供給はどうなるのか。前出の製薬企業関係者によると、ネオクリティケアに製造委託している品目の供給が途絶えるほか、自社で製造しネオクリティケア向けに納品している製品の代金回収ができなくなる恐れがあるという。
 医療現場への影響については、「ネオクリティケアはガラスアンプル注射剤とソフトバッグ製剤に強みを持っており、少なからず影響が出るのではないか」と述べた。
 ネオクリティケアは日刊薬業の取材に対し、本社工場の製造が止まっていることを認めた。その上で「製造ラインの再開や製造販売の承継などのめどは立っておらず、厚生労働省に相談している」と状況を説明した。
 この件を受け、福岡資麿厚生労働相は9月9日の閣議後会見で、ネオクリティケア製薬が破産手続きに入ったことについて、「同社に対し、他の製造販売業者に代替薬の増産を依頼するといった必要な調整を行うよう指示をした」と述べ、対応に当たっていることを明らかにした。
 ただ業界内からは「破産した企業に代替先の企業探しを指示しても果たして実効性はあるのか」といった不安視する声も出ている。
 ネオクリティケアの工場の製造停止を受け、委託元の企業では限定出荷を出す動きがすでに出ており、中には在庫消尽をもって供給停止にする案内を出す品目もある。破産によってさらに影響が広がる可能性がある。