医薬品物流とフィジカルインターネットの融合による効率化の取り組みについて
〇医薬品物流の課題
医薬品物流は、生命や健康に直接関わる製品を扱うため、他の業界とは異なる厳格な品質管理基準が求められる特殊な分野です。 医薬品の物流では、温度や湿度の管理、トレーサビリティの確保、毒物や劇薬などの特殊な取り扱いが必要な医薬品の管理など、物流のあらゆる段階で高い精度が求められます。また、医薬品物流は主に「メーカー物流」と「卸物流」に分かれています。上流となるメーカー物流はメーカーから卸業者への着荷まで、商品着荷後、卸業者が地域の病院・調剤薬局へのラストワンマイルを担っており、有事の際のライフラインを守る重要な物流機能を担っています。
しかし、近年の日本では、物流業界が深刻な課題に直面しています。人口減少に伴う労働力不足や、2024年4月に施行された働き方改革関連法によるトラックドライバーの時間外労働規制、燃料価格の高騰などが、物流業界全体に影響を与えています。これにより、トラック便数の減少、納品回数の減少、物流リードタイムの長期化、納品タイミングの柔軟性の低下、さらには医薬品物流の品質低下が懸念されています。 特に医薬品物流は、緊急医薬品の需要に対応するため、迅速かつ確実な配送が求められるため、これらの課題は業界にとって大きな問題となっています。
〇フィジカルインターネットとは
こうした課題を解決するために、2021年10月に経済産業省と国土交通省が事務局となり、我が国における「フィジカルインターネット」の実現に向けたロードマップを策定することを目的にフィジカルインターネット実現会議を設置しました。
フィジカルインターネットとは、インターネット通信の考え方を物流に適用し、デジタル技術を活用して物資や倉庫、車両の空き情報を見える化し、規格化された容器に詰められた貨物を複数企業の物流資産をシェアしたネットワークで輸送する仕組みです。 この新しい物流システムは、効率性、強靭性、良質な雇用の確保、ユニバーサルサービスの提供を目指しており、2040年までの実現を目標としています。
≪図1 フィジカルインターネットの考え方≫
≪図2 フィジカルインターネットが実現する価値≫
<引用>
〇 経済産業省 2025年度第1回 フィジカルインターネット実現会議
資料5 フィジカルインターネット・ロードマップ本文の一部改訂(事務局)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/physical_internet/pdf/2025_001_05_00.pdf
〇フィジカルインターネット実現会議医薬品WG
フィジカルインターネット実現会議では、これまでに、化学品、建材・住宅設備、百貨店、スーパーマーケットなど業種別WGを設置し、それぞれが実現に向けた課題の検討を進めていますが、2024年6月に新たに医薬品WGが設置されました。
医薬品WGでは、医薬品物流が抱える課題を受けて5つの分科会を設置し、実現に向けた課題の検討に着手しています。
〇最後に
これらの取り組みは、医薬品物流の効率化だけでなく、災害時の医薬品供給の強靭化や、環境負荷の低減、グリーン物流の推進にもつながります。
医薬品物流の未来を見据えたフィジカルインターネットの実現は、患者様の安全・安心を守るだけでなく、社会全体の持続可能な発展に寄与する重要な取り組みです。持続可能な医薬品物流を実現するために、国の取り組みと強固に連携し、業界全体で課題解決に向けた協力を進めることが求められています。