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ICH-Q3D及びM7について

ICH-Q3D及びM7について

 医薬品の品質を確保する上で不純物管理は最も重要なものですが、その不純物として特に最近大きな注目を浴びている元素不純物と変異原性不純物について簡単に説明します。これらはICHのガイドラインとして設定されていますので、総称としてICH-Q3D(元素不純物)及びICH-M7(変異原性不純物)と呼ばれることがあります。


 ICH(医薬品規制調和国際会議)では、各国の医薬品業界や規制当局の代表者が定期的に集まり、国際調和を念頭に薬事規制に関するガイドラインを作成しています。日本、米国、EU等の規制当局と製薬業界17団体(2020年11月時点)がメンバーとして参加し、品質や安全性に関するガイドラインは既に多くのものが発出されていますが、ICH-Q3D(元素不純物に関するガイドライン)についてもステップ5に到達した後、わが国では2015年9月30日に薬食審査発0930第4号として発出されています。2020年6月26日にはその改訂版も発出されましたが、第18改正日本薬局方(2021年6月告示)において元素不純物として一般試験法にも組み込まれました。更に厚労省から2020年12月28日に薬生薬審発1228第7号「医療用医薬品に係る元素不純物の取扱いについて」として通知が発出され、18局告示後3年以内に新薬、日局品に限らず全ての製剤についてICH-Q3Dに基づく評価が求められることとなりました。金属元素の微量分析を行うために主にICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)という機器を用いる必要がありますが、ジェネリック医薬品企業には所有していない企業も多く、外部委託費用等により多くの製造販売品目を持つジェネリック医薬品企業にとって負担の大きい試験となっています。


 一方の変異原性不純物に関しては、2015年11月10日に薬生薬審発1110第3号「潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理ガイドライン」が発出され、2018年6月27日にはその一部改正通知が発出されています。新規申請を行う新薬についてはその原薬、製造過程で生じる中間体や副生成物等について変異原性の評価を行い、必要に応じてその管理が必要とされています。ガイドライン上ではジェネリック医薬品について評価は求められていませんが、ジェネリック医薬品の製造販売承認の審査において、もし対応する先発医薬品が変異原性不純物の管理を行っておれば、同等の品質とするために規格設定等が通常求められます。またコホート・オブ・コンサーン(cohortofconcern)と呼ばれる既に変異原性を持つことが知られている化合物群があり、N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)やN-ニトロソジエチルアミン(NDEA)といったニトロソアミン類がそれに該当します。NDMAについては数年前にバルサルタン原薬の合成過程において検出された事例やラニチジン製剤の化学的分解によって生成した事例が報告され大きな問題となりました。変異原性不純物は発がん性という観点から元素不純物以上に患者さんにとってのインパクトは大きいものですが、こちらも分析には液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS/MS)といった超高感度分析機器が必要となります。厚労省からは本年度中に各企業にニトロソアミンのリスク評価を求める通知が出される見込みです。

以上

JGAニュースNo160からの転載です