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月刊JGAニュース

企業指標の公表に賛否

株式会社じほう
報道局 海老沢 岳 氏

 厚生労働省が2026年度中に公表を予定している後発医薬品の「企業指標」を巡り、企業の受け止めが分かれている。大手後発品専業メーカーは、安定供給体制を整えるためのインセンティブであり、自社の取り組みの成果を示す「通信簿」として前向きに捉えている。だが、受託製造を主力とする企業からは、現行指標では医薬品の安定供給への貢献が十分に反映されておらず、それが企業全体の評価として受け止められかねないといった懸念が出ている。

 企業指標は、後発品を製造販売する企業の安定供給体制などを点数化し、A、B、Cに区分する仕組みだ。評価項目には、安定供給に関する情報の公表や供給実績、製造余力、原薬の複数ソース化などが含まれる。26年度薬価制度改革では、この評価結果が後発品の薬価算定に活用された。今後、企業別区分が公表されれば、薬価上の扱いを超え、医療機関や卸、株主などに「企業の格付け」として受け止められる可能性がある。

○「企業指標」は誤解を招く

 ダイトの松森浩士社長兼CEOは取材に、現行指標を見直さないまま「公表ありき」で進むことに異論を唱える。松森氏は、ダイトの26年度評価が「B」だったことを明かした。その上で、事業の一部である後発品製造販売事業の評価が「企業指標」という名称で公表されてしまうと、本来は企業指標とは関係がない原薬製造やCMO、健康食品などの事業も、品質や安定供給に問題を抱えている企業という印象を世間に与えてしまいかねないと指摘する。上場企業であるため、企業価値への影響は無視できない。

 松森氏が現行の企業指標で特に問題視しているのは、専業GEメーカーとは異なり、主要な事業を複数持つハイブリッド型企業の実態が反映されにくい点だ。自社の製造販売品はシェアが低くとも、受託製造で同じ成分全体の供給を支えているようなケースがある。しかし現在の指標では、製造販売品のシェアが3%未満なら、マイナス評価を受けてしまう。その一方で、受託による供給貢献は評価されない。松森氏は「自社製品のシェアは3%未満でも、受託製造し、市場に供給しているシェアが20〜30%に達している成分もあり、そこが評価されていない」と訴える。
 原薬の複数購買の評価についても持論がある。松森氏は、原薬から製剤までを自社グループで一貫管理することは、品質や安定供給の観点から、本来は評価されるべきだと主張する。ところが自社原薬を使う比率が高いほど、原薬のダブルソース比率は低くなり、企業指標では不利に働いてしまう。
 松森氏は「各社がダブルソースを登録したとしても、そのうち1社は承認書を取得しておくだけで、2社から常時購入しているケースは多くない」と指摘。その上で、評価項目として残すのなら、「どれだけリスク低減になっているか、実態に合わせた見直しが必要だ」と指摘する。
 ただし松森氏は、少量多品目構造を是正するために、シェア3%未満の品目が多い企業を低く評価するのを全否定しているわけではない。「ダイトでも、シェアが低い品目をやめる選択肢はあり得る」という。

○「不満はあるが、致し方ない」

 別の中堅後発品メーカー関係者も、ダイトと同じような問題意識を持っている。この企業も、自社製品のシェアは低いが、他社の同一成分を受託製造し、成分全体の供給を支えている。また古い注射剤では、原薬を製造する企業が1社しかなく、ダブルソース化が不可能なものもある。業界団体を通じてこうした実情を厚労省に訴え、指標の見直しを求めているものの、現時点では反映されていないという。
 ただ、この関係者は、企業指標を公表すること自体は否定していない。「不満はあるが、指標は安定供給体制を構築するインセンティブにもなっており、公表は致し方ない」と述べ、粘り強く見直しを訴えていくしかないと考えている。

○企業指標は「鏡」

 一方の大手後発品専業メーカーは、企業指標を前向きに受け止めている。こちらの関係者は、「5年にわたる後発品の供給不安を背景に、安定的に後発品を市場に供給するため、適正に取り組む企業を評価する仕組みとして企業指標が導入された」と指摘。この制度は中医協で議論され、後発品業界の意見も踏まえて設計されたものであり、社会が後発品企業に求める体制を映す鏡だと話す。
 この企業では、企業指標を社内の「通信簿」として活用している。社内で指標を独自にポイント計算し、どの項目が評価され、どこに課題があるかを把握。品質管理や生産、営業などの各部門にフィードバックし、改善に取り組んでいる。この関係者は「企業指標を基に、企業として当然すべきことを確認している」と話す。
 その上で、評価方法が完全ではないことは認めつつも、「自社に有利か不利かではなく、社会が何を求めているかを真摯に受け止めるべきだ」と指摘する。企業指標の公表にも前向きだ。他社から慎重論が出ていることには理解を示しつつも、まずは評価結果を公表し、試行錯誤しながら改善すればよい、との立場だ。

○納得感のあるルールへ、議論を

 企業指標の受け止めは三者三様だが、取材をした限りでは、安定供給を重視する政策そのものを否定するような声は出ていない。ただ、後発品企業には、自社製造が中心のところもあれば、受託製造中心の会社もある。原薬と製剤の双方を手がける企業もあり、実態は幅が広い。それらを一律の物差しで測るのは、なかなか難しい。
 このまま企業指標を公表するのなら、例えば指標の名称を「安定供給指標」に変更してはどうか。後発品企業そのものの評価ではなく、あくまで企業として安定供給に資する取り組みを行った指標であることを明確にしてはどうだろう。
 26年度の薬価改定では、この指標を基に既収載後発品の薬価が算定された。ただ、27年度以降を見据えて見直しの議論を行うことは可能だ。浮上してきた受託製造や原薬の内製化、ダブルソース化できない品目などの課題に対し、皆が納得できるルールに改める必要があるのではないか。