危機対応医薬品、原薬を国産化へ 厚労省、安定供給5事業に2748億円
報道局 海老沢 岳 氏
厚生労働省は2027年度予算概算要求で、抗菌薬や感染症治療薬の原薬の国産化など、医薬品の安定供給に関する5事業に計2748億7600万円を要求した。感染症の世界的流行に対し治療薬の切り札となる「危機対応医薬品」については、原薬と製剤の国内製造体制を新たに整備し、海外依存の低減を進める。
5事業のうち感染症危機への備えとして新たに「危機対応医薬品原薬国産化支援事業」を設け、必要な金額は示さない「事項要求」とした。パンデミックなどで国際物流が途絶した場合、供給停止が生命の危機に直結する危機対応医薬品(感染症治療薬)を対象に原薬の国内製造体制を整備する。国が事業費の50~80%を補助する。
「危機対応医薬品国内製造体制支援事業」も新規で840億円を要求する。危機対応医薬品について、原薬だけでなく製剤まで国内で生産できるよう製造設備を整備する。ワクチンについても国内製造体制の構築を支援する。補助率は2分の1。原薬から製剤まで一貫した国内供給体制を確保し、有事の需要急増や海外からの供給途絶に備える。
特定重要物資では、「抗菌薬原薬国産化事業」に1400億円と事項要求を新規で計上した。現在進めているβラクタム系抗菌薬4成分の原薬国産化について、物価高騰による整備費の増加を踏まえて基金を積み増す。併せて、4成分の国産原薬を使って製剤を生産する国内製造設備も新たに支援対象とする。国が費用の2分の1を負担する。
さらに、8月に5成分目の特定重要物資としてβラクタム系抗菌薬セフトリアキソンナトリウム水和物が追加されたことを受け、同成分についても原薬の国産化と製剤の国内製造設備を支援する。必要な費用はいずれも基金に積み増す。
このほか、感染症治療薬以外の供給確保医薬品についても供給網強靱化を進める。「供給確保医薬品等に係る供給網強靱化(国産化・複数化)支援事業」には482億5000万円を要求した。地政学上のリスクなどから海外製造品の供給が途絶する事態に備え、原薬調達先の複数化や製剤の海外製造所から国内製造所への切り替え、国内製造設備の増強などを2分の1補助する。
「抗菌薬等医薬品備蓄体制整備事業」には26億2600万円を要求する。想定を超える感染症の流行や原薬の輸入途絶などで、企業による通常の在庫確保だけでは供給リスクを吸収できない医薬品を対象に、追加備蓄を支援する。国内で製造企業が限られる品目などを念頭に、在庫積み増しに伴う倉庫費や人件費、設備整備費などを国が2分の1補助する。
厚労省はこれら5事業を通じ、海外依存など医薬品供給網の脆弱性を低減し、不測の供給途絶に備える体制整備を進める方針だ。
高市早苗首相は10月5日の衆参本会議で行った所信表明演説で、政府が進める「危機管理投資」の対象の一つに「健康医療安全保障」を掲げた。医薬品の安定供給もその重要な柱となる見通しで、抗菌薬原薬の国産化や危機対応医薬品の国内製造体制整備など、今回の概算要求に盛り込まれた施策は、政府の危機管理投資を具体化する取り組みとして位置付けられるものとみられる。