我が国の保険診療の流れは下図のようにまとめられます。
1958年に新しい「国民健康保険法」が制定され、1961年に現在の「国民皆保険」が発足して以来、全ての国民は、いずれかの医療保険に加入(被保険者となる)、医療保険者(以下、保険者)に保険料を支払い、患者となった場合に、保険医療機関、薬局で診療、調剤を受けた場合、本人負担金(現役世代で掛かった医療費の3割)を支払うことで、医療を受けられます。医療機関、薬局は残りの医療費を審査支払機関に請求して、診療報酬を保険者から審査支払機関を経由して受け取ります。
保険者には、次のような種類があり、総数3,237の保険者が存在します。(令和2年3月末時点)
1)被用者保険者
①協会けんぽ(全国健康保険協会) 保険者数:健康保険法に基づき、自らは健康保険組合の設立が困難である中小・零細企業の労働者とその家族が加入できるよう、設立された保険者(平成20年の法律による設立以来:1協会)
都道府県支部ごとに保険料率を設定 (令和2年度平均:10.0%)
加入者数:4,044万人(令和2年3月末)(被保険者2,479万人、被扶養者1,565万人)
②健康保険組合 保険者数:健康保険法に基づき、健康保険事業を行う公法人
(令和2年3月末:1,388組合)
・単一組合:1企業により組織された組合 (被保険者数:700人以上)
・総合組合:同種同業の事業主等で組織された組合(被保険者数:3,000人以上)
それぞれの組合で保険料水準は異なる (令和2年度平均:9.2%)
加入者数:2,884万人(令和2年3月末)(被保険者1,635万人、被扶養者1,249万人)
③共済組合
共済各法に基づき、国家公務員や地方公務員、私立学校教職員等を対象として設立された保険者(令和2年3月末現在:85組合)
それぞれの組合で保険料水準は異なる (令和元年度平均:5.8%)
加入者数:855万人(令和2年3月末)(被保険者457万人、被扶養者398万人
2)市町村国保(国民健康保険)
市町村国保は、他の医療保険(被用者保険、後期高齢者医療制度)に加入していない全ての住民を被保険者とすることで、「国民皆保険」を支える仕組みである。
昭和30年代は農林水産業者、自営業者が中心であったが、現在は非正規労働者や年金生活者等の無職者が7割を占める。
保険者:都道府県及び市町村(47+1,716。平成30年度以降の姿であり、それ以前は市町村のみ)
被保険者数: 約2,660万人(令和2年3月末)
平均年齢: 53.6歳(令和元年度)
保険料: 全国平均で、一人当たり年額8.9万円(令和元年度。介護納付金分は含まない。)
実際の保険料率は、各市町村がそれぞれの実情を踏まえて定めている。
3)後期高齢者医療制度
保険者数:47(各都道府県の広域連合)
対象者:75歳以上の高齢者 約1,803万人(令和2年3月末)
保険料:全国平均 年額7.2万円(令和元年度。介護納付金分は含まない。)
国保と被用者保険の二本立てで国民皆保険を実現しているが、所得が高く医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入する一方、退職して所得が下がり医療費が高い高齢期になると国保に加入するといった構造的な課題がある。このため、高齢者医療を社会全体で支える観点に立って、75歳以上について現役世代からの支援金(国保、健保、共済、協会から4割)と公費(5割)で約9割を賄う仕組みを既存の制度内に設けていたが、「若人と高齢者の費用負担関係が不明確」といった批判があったことを踏まえ、「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針について」
(平成15年3月28日閣議決定)に基づき75歳以上を対象とする新たな制度を別途設けたもの。
所得が高く医療費の低い現役世代が多い共済組合以外の保険者には、後期高齢者医療制度以外の保険者でも、医療費の増大により、被保険者の掛け金では、まかなえず、公費が投入されているが、その現状は下図のとおり。
<引用>我が国の医療保険について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
より加工して作成
このような、公費の投入などでも、零細な保険者の中で経営が安定しない保険者が生じている。そのため、保険者の再編・統合に向けて、「被用者保険、国保それぞれについて、各保険者の歴史的経緯や実績を十分尊重しながら、保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険者としての機能を発揮しやすくするため、再編・統合を推進する」ことを基本方針として、「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針について」(平成15年3月28日閣議決定)が定められている。
<参照>「健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hoken-kaisei/index.html
JGAニュースNo185からの転載です