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安定性試験

安定性試験

 医薬品の承認申請に際して、その製品の有効性・安全性・品質が確保されていることを申請添付資料で証明しなければなりません。
 その品質においては、製造販売業者から医療機関に納入されるまでの流通段階で品質が保たれることが重要です。こうした製品品質が保たれていることを証明する資料・データとして、一定の条件下での安定性を確認するために安定性試験を実施し、申請資料として規制当局に提出し、審査/承認されます。
 この安定性試験結果は、当該医薬品の貯蔵方法や有効期間などを設定するためにも必要な情報となります。
 なお、後発医薬品は既に臨床現場で使用されている先発医薬品の置き換えとなるために、最近は、医薬品の流通段階だけではなく、患者さんが服薬するまでの期間内までも品質が安定であることを、ある程度保証することも求められています。
 この安定性試験データは、新規有効成分含有医薬品(新医薬品)、後発医薬品を問わず全ての医薬品について必要なデータとなっています。ただ、そのデータを取得する試験については適用となる試験法の指針(ガイドライン)が新医薬品と後発医薬品とでは異なっています。
 現在、後発医薬品の安定性試験を行うガイドラインである薬審43号通知【医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績の取扱い;平成3年2月15日付】は、その通知が発出された平成3年時点では、新医薬品、後発医薬品とも同じガイドラインに従って試験を行う事となっていました。しかし、その後、新医薬品についてはICH(医薬品規制調和国際会議)で合意された医薬品開発に求められる各種試験のガイドラインが設置され、安定性試験においても新医薬品が対象となる新たな安定性試験のガイドラインが制定され、新医薬品の承認申請にあたっては当該ガイドラインに従った安定性試験のデータが求められています。本ガイドラインは,医薬審発第0603001号(ICH-Q1A新有効成分含有医薬品の安定性試験ガイドライン;平成15年6月3日付)により通知されています。
 一方、日本においては、後発医薬品はICHの議論の対象とはされていないため、その結果、後発医薬品は従前の薬審43号通知による安定性試験を実施したデータを承認申請では提出することになっています。
 後発医薬品は先発医薬品と同一の有効成分を含有する医薬品であり、多くの場合は、先程述べたとおり医療現場において先発医薬品からの置き換えにより使用されることから、後発医薬品の承認審査では先発医薬品と同等であること(同一性調査)の審査が主として行われています。
 そのため、先発医薬品の安定性が長期保存試験によって3年以上であることが確認されている場合は、後発医薬品については一定の流通期間中の品質の安定性を短期間で推定するための安定性試験として、加速試験が実施されます。加速試験は、長期保存試験の保存条件の温度よりも高い温度の保存条件を設定することにより、品質の劣化を加速して安定性が推定できる試験方法で、加速試験において6 ヵ月間以上の安定性が確認された場合には、長期保存においても3年以上安定であることが推定されます。

 先発医薬品が3年以上安定である場合、後発医薬品は長期保存試験ではなく、加速試験(6 ヶ月)を行うことで3年間以上安定であることが推定され、承認申請が行われています。
 後発医薬品において、現在、新医薬品と同様にCTD(コモン・テクニカル・ドキュメント;国際共通化資料)様式による承認申請が必須となっており(平成29年3月以降に承認申請された品目から対象)、その申請の際添付するチェックリストには、品目特性に応じた資料の提出が必要に応じて求められています。製品の安定性を更に確認するため、並行した長期保存試験が実施される場合もあり、承認審査においても必要に応じて実施中の長期保存試験の中間結果なども提出することもあります。
 一方で、平成28年からICHにIGBA(国際ジェネリック医薬品・バイオシミラー協会;GE薬協も加盟するジェネリック医薬品の国際組織)が正式加盟したことにより、ICHの議論において後発医薬品をテーマとしたガイドライン案も検討されるようになりました。
 今後、安定性においても、承認申請時には従来の加速試験のデータだけではなく、長期保存試験のデータも提出が求められる時期が来ることが予想されます。
 後発医薬品も新医薬品と同じように、承認審査において、その品目特性を考えたデータ評価が行われることから、後発医薬品の開発においては、この審査に十分対応できる製剤設計・開発体制の整備が必要になります。

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