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特別寄稿

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み 神奈川支部

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み 神奈川支部

1.はじめに

 協会けんぽ神奈川支部では、7月1日に神奈川県厚木市内で開催されたパネルディスカッション「ジェネリック医薬品シェア80%達成に向けた課題と解決策」に、パネリストとして参加しました。
 以下、協会けんぽ神奈川支部におけるジェネリック医薬品に係る現状、課題及び取組についてご紹介します。

2.神奈川県・協会けんぽ神奈川支部の現状

(神奈川県の現状)
 神奈川県は、本年4月から第3期の医療費適正化計画をスタートさせましたが、この計画期間中に取り組むべき課題の一つとして、ジェネリック医薬品の使用促進を掲げています。
 使用割合の目標は、「骨太の方針2017」を踏まえて80%と設定していますが、神奈川県の平成30年1月時点の使用割合(調剤のみ)は70.4%であり、目標達成までの道のりは決して安易なものではありません。
 厚生労働省の統計によると、神奈川県の使用割合は、全国平均(71.9%)を下回る70.4%であり、かつ全国平均との差は拡大傾向にあります。また、全都道府県内での順位も平成26年3月時点の29位から、平成30年1月時点では38位まで後退しています(図表1)。
 このようなことから、神奈川県は、今年度、厚生労働省が実施する「後発医薬品使用促進事業」の重点地域に選定されました。

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(神奈川県のジェネリック医薬品の使用促進に係る阻害要因・課題)
 協会けんぽ神奈川支部の平成30年2月時点の使用割合は72.9%ですが、協会けんぽ全国平均(74.6%)を下回っており、かつ全国平均との乖離幅が拡大しています。
 協会けんぽが作成した「ジェネリックカルテ」(地域ごとのジェネリック医薬品使用促進の阻害要因を「見える化」したもの)をみると、神奈川支部に関しては、(1)医療機関の視点からは、院内処方・院外処方ともにジェネリック医薬品の使用割合が低い、(2)薬局の視点からは、一般名処方限定のジェネリック医薬品使用割合が低い、(3)患者の視点からは、ジェネリック医薬品を拒否する加入者の割合が高い、などの阻害要因が見えてきます(図表2)。
 協会けんぽ神奈川支部においては、これらの阻害要因について、優先順位を付けて対策を講じていくことが大きな課題となっています。

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3.協会けんぽ神奈川支部の取組

 このような中で、協会けんぽ神奈川支部が取り組んでいるジェネリック医薬品の使用促進策についていくつかご紹介します。
(行政への働きかけ)
 神奈川県が設置している神奈川県後発医薬品使用促進協議会に、協会けんぽ神奈川支部からも委員として参画しています。
 平成29年10月に開催された協議会では、平成30年度からスタートする第3期の医療費適正化計画に関して、ジェネリック医薬品の使用促進策等について議論が行われましたが、支部長からは、神奈川県の使用割合と全国平均の差が拡大していることなどを踏まえ、「県は、使用割合を大きく伸ばしている他県の取組を参考に追加施策を検討すべき。また、使用割合が低い市区町村にターゲットを絞り、使用割合が低い原因を解明して使用促進に取り組むべきである」などの意見を発信しています。

(加入者への働きかけ)
 協会けんぽは、平成21年度以降、加入者に対して、現在使っている医薬品をジェネリック医薬品に切り替えた場合のお薬代の軽減可能額を通知する「ジェネリック医薬品の軽減額通知サービス」を年2回実施しています。
 平成28年度は、神奈川支部の通知対象者約26万6千人のうち約6万2千人(23.3%)の加入者にジェネリック医薬品に切り替えていただきました。
 その推定軽減効果額は、約11億3千万円に上ります(図表3)。

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(薬局への働きかけ)
 ジェネリック医薬品の使用割合は、後述のとおり、神奈川県内でも2次医療圏によってかなりバラつきがあります。このバラつきは、個々の薬局単位まで分解していくとさらに顕著になります。
 使用割合のバラつきをなくし、全体の使用割合を高めることを目的に、本年6月、医薬品処方数量が多い約800の薬局に対して、それぞれの薬局のジェネリック医薬品処方割合と神奈川県内での立ち位置、さらには薬効分類別の処方割合なども記載したお知らせをお送りしました。
 このお知らせでそれぞれの薬局がどのような立ち位置にあるかを「見える化」することによって、薬局のみなさまのジェネリック医薬品使用促進の意識がより向上するとともに行動の変化が現れることを期待しています。

4.厚木市でのパネルディスカッションについて

 平成29年10月診療分における協会けんぽのジェネリック使用割合(薬局所在地ベース)は県平均で 70.0%でしたが、2次医療圏別使用割合(図表4)では、最も高い川崎南部医療圏(73.4%)と最も低い湘南 西部医療圏(64.6%)では、なんと9ポイント近くの開きがあります。

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 また、湘南西部医療圏に次いで県央医療圏の使用割合が低くなっていますが、7月1日にパネルディスカッションが開催された厚木市は県央医療圏にあり、湘南西部・湘南東部医療圏にも隣接しています。
 厚木市の会場にお越しいただいたこれらの医療圏内にある医療機関・薬局の関係者や一般市民のみなさまに2次医療圏のジェネリックカルテを用いて、例えば、「湘南西部医療圏では、院外処方の一般名処方率を向上させ、院外処方のジェネリック使用割合を上げることが課題である」など、3つの2次医療圏のそれぞれの阻害要因と課題についてお示しできたことは、たいへん有意義だったと思っています。
 パネルディスカッションの翌日には、パネルディスカッションを傍聴されていた他の医療保険者から、「地域別の使用割合は協会けんぽと同様の傾向が見られる。今後、神奈川県などとの連携を強化して取り組んでいきましょう」という電話をいただき、たいへん心強く感じたところです。
 今回のパネルディスカッションが、神奈川県のジェネリック医薬品の使用割合の向上の契機となることを大いに期待しています。

5.おわりに

 協会けんぽ神奈川支部は、今回のパネルディスカッションを契機に、骨太の方針に掲げられた80%という目標に向けて、行政、医療機関・薬局、他の医療保険者との連携の強化などを進め、神奈川県全体の使用割合の向上に貢献していきたいと考えています。
 日本ジェネリック製薬協会及び会員の皆様には、さらなるご支援をお願い申し上げます。

JGAニュースNo.124(2019年8月号)

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