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特別寄稿

健保組合における後発医薬品の使用促進について

健保組合における後発医薬品の使用促進について

健康保険組合連合会 医療部長

三宅 泰介

 後発医薬品については、平成 29 年 6 月の閣議決定において、「2020 年(平成 32 年)9 月までに、後発医薬品の使用割合を 80%とし、できる限り早期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討する。」と定められ、残すところ2年を切ることとなった。
 健保組合における直近の集計データ(調剤報酬)を見ると、30 年 5 月に 75%を超え、6 月には合計で 75.7%、内訳は被保険者本人が 77.9%、家族が 72.5%となっている。あと一歩のところまで順調に来ているかに見えるが、ここからの数値の押し上げは非常に難しく、これから正念場を迎える。
 健保連・健保組合は、従前より後発医薬品の推進政策に賛同し、加入者への周知や理解促進、調剤報酬や薬価制度の見直し等に努力・協力してきた。しかし、国は目標に向けてさらにアクセルを踏み込み、後発医薬品の使用割合を後期高齢者支援金の減算の指標項目(インセンティブ)とし、保険者ごとに使用割合を公開するなど、強いプレッシャーをかけ使用促進を加速させている。
 本年 10 月、厚生労働省が平成 28 年度健康保険組合事業状況調査の結果(回答は 1,170 組合)を公表した。(平成 27 年度同調査結果は 1,079 組合が回答。)
 これによると、全体の 92%に相当する 1,076 組合が何らかの使用促進対策事業に取り組んでいる。特に、後発医薬品差額通知によると推測される医療給付費の減少額は、把握できただけで合計 54 億9,929 万円にのぼり、当該事業経費を差し引いた実質的な節減効果は 41 億 3,615 万円となり、前年度調査の 22 億 7 千万円を大きく超えた。
 事業実施組合の 75%を占める 806 組合が先発品と後発品の差額を加入者に通知し、当該通知の総数は 475 万件だった。前年度調査の 758 組合(70.3%)、471 万件から伸びている。通知方法については、差額通知実施組合の 63%が一定以上の自己負担軽減額を見込める加入者に通知。また、一定の年齢以上で対象を絞り、生活習慣病治療薬(先発品)を長期服用している加入者を対象に選定するなどの工夫を行っている。
 この他の対策としては、機関紙・ホームページでの呼びかけ、後発品希望シールの配布、リーフレット作成などが続く。
 昨今の健保組合の財政状況は極めて深刻な状況にあり、大規模健保組合の解散も相次いでいる。事業運営がますます厳しくなるなか、完全とは言えないまでも、費用対効果も考慮しながら効率的に事業を実行・継続し、医療費を適正化すべく努力している。
 当然、まだまだこうした地道な取組みを強化していく必要があるとはいえ、一方で医師や患者に根強く先発品志向が残っている限り、なかなかこれ以上大幅に使用割合を上昇させることは難しい。
 そこで健保連は、後発医薬品を原則処方とすることも視野に入れた検討を提起している。少なくとも、現行のように先発品を銘柄指定し、変更不可とできるような仕組みは改め、原則一般名処方とすべきである。引き続き中医協等で議論を進めたい。
 さらには、今回の薬価制度抜本改革の主旨を踏まえ、先発品は後発品が出てきたらなるべく速やかに当該市場を譲り、新薬メーカーは新たな新薬の開発に力を向けるという、大きなサイクル(役割分担)を構築していくべきだと考える。
 人口減少・少子高齢化社会を迎え、医療費の高騰により医療保険制度の維持が厳しい状況となっている(健保連の推計で、2025 年度国民医療費は約 57.8 兆円の見込み)。制度による誘導策を講じたとしても、その中で実際に薬を選択し、服用するのは患者である。最後は患者の意識であり、まさに我々国民ひとりひとりに問われている問題なのである。
 国には国民・患者・医療側に不安や誤解を解消させるための周知活動を強化していただき、健保連・健保組合としても、加入者・患者への理解を求めながら、後発医薬品の使用割合の目標達成に向け、引き続き注力していきたい。
 最後に、後発医薬品の製造、安定供給等に日々ご尽力されている製薬企業等関係者の皆様に感謝申し上げ、今後とも医療保険制度の維持発展のため、ご協力をお願いしたい。

JGAニュースNo.128(2019年12月号)

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