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特別寄稿

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み 滋賀支部

全国健康保険協会(協会けんぽ)のジェネリック医薬品使用促進の取り組み 滋賀支部

 滋賀県は琵琶湖を中心に19市町が存在し、県人口は約140万人です。また、二次医療圏別にみると、大津、湖南、甲賀、東近江、湖東、湖北、湖西の7つの圏域に分かれています。協会けんぽ滋賀支部の加入者数は約35万人、加入事業所数は約1万9千事業所であり、協会けんぽの支部としては小規模な支部になります。
 滋賀支部の現状として、後発医薬品使用割合は平成30年8月診療分(調剤分)で76.1%と47支部中31番目に位置しています。また、後発医薬品の使用における他支部と比較した滋賀支部の強みは、院内処方の医療機関や院外処方の診療所、保険薬局の後発医薬品使用割合が全国平均を上回っています。弱みとしては、一般名処方率が全国平均を下回っており課題が現れています。
 以下、滋賀支部の後発医薬品使用促進の取り組みについて紹介いたします。

1. 保険薬局向けの情報提供の開始

 新指標が導入された平成25年4月時点において滋賀支部の後発医薬品使用割合は、46.5%と全国平均48.7%を下回る水準にありました。そこで、後発医薬品使用促進の取り組みを強化していくにあたり、当時岡山支部が先行して行っていた保険薬局向けの情報提供ツールを導入し、滋賀県薬剤師会の了承を得て、平成26年1月に滋賀県内の保険薬局に対して情報提供を開始しました。こちらの事業については毎年1月に平成28年1月まで行いました。

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2. 滋賀支部パイロット事業の立ち上げ

 滋賀県薬剤師会からは、情報提供ツールの提供は参考になるとの意見をいただいていましたが、コンテンツの内容について改善する必要性を感じていました。そこで、滋賀支部の後発医薬品の使用状況を把握するため、本部提供のデータを用いて、薬効分類別後発医薬品使用率について、後発医薬品の使用率が最も高い沖縄支部と比較分析を行いました。
 比較の結果、滋賀支部は沖縄支部と比べてアレルギー用薬を除きあらゆる薬効分類で使用率が低い傾向にありましたが、特に呼吸器系用薬にかい離がみられたため、呼吸器系用薬について薬効分類3桁に拡張すると、去たん剤がかい離していることが分かりました。
 収録データの関係からこれ以上細分化はできませんでしたが、もし滋賀支部と沖縄支部で採用している医薬品に違いがあり、それが後発医薬品についての情報不足によるものが要因であるならば、沖縄県内での使用実績や一定の流通量が確保されている面を考えると、沖縄支部で広く使われている後発医薬品について、滋賀県内の保険薬局に提示することで、滋賀県においても後発医薬品の使用促進につながるのではないかと考えました。
 そこで事業化にあたり平成26年中頃から本部とデータ抽出等について協議を重ねておりましたが、平成28年度パイロット事業「レセプトデータに基づく保険薬局に対するジェネリック医薬品情報提供サービスの提供」として承認を受けることとなり、こちらについては同年度に静岡支部も類似のパイロット事業を実施予定であったため、情報共有を図りながらそれぞれ事業を実施することになりました。

3. 平成 28 年度パイロット事業

 パイロット事業の具体的な事業内容は、滋賀支部と沖縄支部の平成27年度における医科および調剤レセプトを使用して後発医薬品使用状況の比較を行い、保険薬局向け通知書を作成しました。また、滋賀県内で広く使われている後発医薬品を薬効分類別に上位5品目を掲載し、医薬品実績リストとして保険薬局向け通知書とあわせて提供しました。 
 この医薬品実績リストと保険薬局向け通知書を対比させることで、保険薬局において後発医薬品の採用にあたり参考としていただくものとしています。

平成28年度保険薬局向け通知書

 ・ 沖縄支部と比較して後発医薬品数量割合が異なる薬効
 ・ 沖縄支部と比較して後発医薬品使用割合が異なる先発医薬品
 ・ 沖縄県内の医薬品数量ランキング(先発品とそれに対応する後発品名)
 ・ 保険薬局と地域との収益構造比較

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4. 平成29年度パイロット事業

 平成28年度からの継続事業として行いました。平成27年度及び平成28年度の滋賀支部における医科および調剤レセプトを使用して、平成28年度パイロット事業で得た知見や改善点も踏まえて、通知書のデザインやコンテンツの変更を行いました。

平成29年度保険薬局向け通知書

 ・ 滋賀県における薬効別後発医薬品数量割合の比較
 ・ 滋賀県における医薬品別後発医薬品数量割合の比較
 ・ 滋賀県における後発医薬品数量割合に関する保険薬局の位置づけ
 ・ 保険薬局毎の技術料・薬剤料および薬学管理料の割合比較

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医薬品実績リスト(平成29年度事業)

 ・ 医科レセプトを使用して院内処方の情報も反映
 ・ 前年度のコンテンツに県内の後発医薬品ランキングTOP50等を追加
 ・ 先発品‐後発品の数量比の項目を追加

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5. 滋賀県後発医薬品安心使用促進協議会での意見発信

 平成30年度から平成35年度の6年間における滋賀県医療費適正化計画(高齢者の医療の確保に関する法律第9条第1項に基づく法定計画)において、滋賀県の後発医薬品使用割合を平成32年度に80%以上とすることが盛り込まれました。
 そこで、今後の後発医薬品の使用率向上に取り組むにあたって滋賀県と意見交換を行い、滋賀支部が行ったパイロット事業について、後発医薬品安心使用促進協議会にて報告することとなりました。平成30年2月1日に開催された後発医薬品安心使用促進協議会には、委員として企画総務部長が参加し、「レセプトデータからみた滋賀支部おける後発医薬品使用状況」として説明を行いました。その後、保険薬局に提供した「医薬品実績リスト」が、後発医薬品安心使用促進協議会名で滋賀県のホームページにおいて公開されることになりました。

6. 終わりに

 滋賀支部は後発医薬品使用促進について、保険薬局を中心に取り組みを行ってきたところであり、後発医薬品使用割合は着実に伸びており、政府目標である80%に向けてあと一歩のところにまで達しました。これはひとえに関係機関の皆さまのご尽力によるものと考えております。
 しかしながら、直近の後発医薬品使用割合について伸びが鈍化している傾向が見られます。冒頭で述べました通り、滋賀支部は他支部と比べて一般名処方率に課題が現れていることから、是非とも医薬品実績リストをご覧いただき、一般名処方率の向上への医療機関の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

JGAニュースNo.129(2019年1月号)

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