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添付文書新記載要領について ~ジェネリック医薬品特有の変更点と課題について~

 2017年6月8日、医療用医薬品の添付文書記載要領が約20年ぶりに改正されました。改正内容は、JGAニュースNo.133の「知っ得 !豆知識」 1) や、日本製薬工業協会PV部会作成の「医療用医薬品添付文書新記載要領 説明資料」 2) にて説明されています。今回は、ジェネリック医薬品特有の変更点と課題について概説します。


ジェネリック医薬品特有の変更点

 ジェネリック医薬品特有の変更点は以下の通りで、通知に基づく詳細な説明については「ジェネリック医薬品添付文書記載要領 説明資料」 3) を作成しています。この資料は、JGAホームページ「医療関係者の方」サイトの「医療関係者の方向け情報TOP」、「ジェネリック医薬品添付文書記載要領」に掲載していますので、そちらをご参照ください。


 添付文書記載要領の主な改正内容-ジェネリック医薬品の立場から

1.「使用上の注意」、「取扱い上の注意」は、原則、先発医薬品と同一となります。

2.「薬物動態」、「臨床成績」、「薬効薬理」は、原則、先発医薬品と同等となります。

3.「生物学的同等性試験」には、対照薬剤である先発医薬品の販売名等を記載します。

4.「取扱い上の注意」から安定性試験結果を削除します。
 本稿では、1.と2.についてもう少し踏み込んで説明します。


使用上の注意、取扱い上の注意について

 これまでジェネリック医薬品の「使用上の注意」、「取扱い上の注意」は、必ずしも先発医薬品とは同一の記載となっていませんでした。
 例えば、「副作用」の項の発現頻度は、記載していませんでした。これは、ジェネリック医薬品に関しては、患者さんを対象とした臨床試験の実施が求められていないため、その臨床試験結果に基づく副作用発現頻度が存在していないことが理由でした。しかしながら、ジェネリック医薬品は、先発医薬品と健康成人における生物学的同等性試験を実施することにより、先発医薬品と治療学的に同等であることが確認されていることから、今回の新記載要領では、発現頻度に関する情報も含めて先発医薬品と原則同一のデータを添付文書に記載することになります。
 なお、先発医薬品と異なる記載となる実例としては、先発医薬品の個別の効能・効果、用法・用量が再審査期間や特許の関係で同一とならない場合に、効能・効果、用法・用量に関係する「使用上の注意」などが異なることになります。

 また、先発医薬品が内服固形剤ですが、ジェネリック医薬品が口腔内崩壊錠などの場合は、製剤特有の「使用上の注意」となるため、異なる記載となります。固形剤や水を飲むことが難しい嚥下困難な人、寝たきりの人でも服用可能な経口フィルム製剤の開発や、溶解操作が不要で即時に使用が可能となるプレフィルドシリンジ製剤の開発、添加物の工夫により光安定性を向上させた製剤の開発など、独特の製剤的工夫を加えたジェネリック医薬品においては、「使用上の注意」、「取扱い上の注意」が先発医薬品と異なる記載となることがあります。


薬物動態、臨床成績、薬効薬理について

 これまで、ジェネリック医薬品の添付文書の「薬物動態」、「臨床成績」、「薬効薬理」(以下、「薬物動態等」とする)の項は、自社で実施した生物学的同等性試験の結果や、公定書を引用した薬効薬理などの限られた範囲内の情報を記載するに留まっていました。
 例えば「用法・用量に関連する使用上の注意」の項で、「薬物動態の項を参照して、TDM(Therapeutic drug monitoring:治療薬物モニタリング)を実施すること」と記載してあっても、ジェネリック医薬品は臨床試験を実施していないため「薬物動態」にTDMを行うための血中濃度推移に関する情報を記載することが出来ないなど、対応に苦慮する事例が散見されました。なお、抗がん剤など臨床経過などから適切に管理しなければ、患者さんに好ましくない影響を与えるような医薬品については、特例的に、承認事項に関連する使用上の注意(「効能・効果」又は「用法・用量」に関連する使用上の注意)において、適正使用を行うために必要とされる特定の情報を参照する必要があることから、こうした情報に限定して、先発医薬品の添付文書に記載されている当該特定の情報に係る部分のみを修正等を加えずジェネリック医薬品の添付文書に引用して記載することが認められます。ただ対象となる医薬品は限られておりごく少数でした(平成22年3月31日付事務連絡「後発医薬品の製造販売業者による先発医薬品の添付文書記載内容(承認事項に関連する使用上の注意「用法・用量に関連する使用上の注意」にて引用される記載内容)を引用した事例について」)。
 また、添付文書に記載された「薬物動態等」は、当該医薬品の安全対策上、適正使用上、重要な情報であることから先発医薬品の添付文書には記載されています。このような重要な情報は、ジェネリック医薬品の添付文書においても先発医薬品と同一の記載とすることが、医薬関係者への適切な情報提供になると考え、議論の過程で行政担当部署等へ「薬物動態等は先発医薬品と同一の記載とすべき」と意見しましたが、結果としては、同一ではなく「先発医薬品と同等」との結論に至り、この内容を踏まえて2018年4月13日に「後発医薬品の添付文書等における情報提供の充実について」(以下、「後発医薬品情報提供充実通知」とする)が発出されました。


薬物動態等の同等記載における課題について

 上述した「後発医薬品情報提供充実通知」に基づいて、先発医薬品と同等の情報提供が適切に行えるのか否か等の実務的な検討を行うため、JGA安全性委員会内に添付文書ワーキンググループ(以下「WG」とする)を設置し、公表されている情報を基に先発医薬品と同等の情報提供が可能か否かの検証を行いました。その結果、「先発医薬品と同等の情報提供が困難な事例が無視できない割合で存在する」ことが明らかとなり、情報収集上の課題、記載内容上の課題が浮き彫りとなりました。


①情報収集上の課題

情報収集上の課題は、以下の通りです。
・先発医薬品の添付文書「23.主要文献」に引用資料が未記載
・先発医薬品の添付文書「23.主要文献」の引用資料が「社内資料」
・先発医薬品の添付文書「23.主要文献」の引用資料が廃刊等で入手不能
・古い品目のため先発医薬品の審査報告書等が公表されていない


 2017年6月8日に発出された記載要領の通知では、
・各項目の記載の裏付けとなるデータの中で主要なものについては主要文献として本項目に記載すること。
・承認申請資料概要が公表されている場合は、該当する承認年月日及び資料番号を併記すること。
と定められていますが、添付文書WGでの検証でも、先発医薬品の添付文書「23.主要文献」の項において、該当する項目の文献が未記載あるいは「社内資料」である事例が検出されています。添付文書WGでの検証では、先発医薬品の公表されている申請資料概要や審査報告書の情報に基づき、ある程度同等記載が可能な事例は検出されています。先発医薬品の添付文書において、引用資料が未記載、引用資料が「社内資料」の事例については、その事例をまとめ、行政当局に情報提供し、本来あるべき情報提供の姿に改めていくための指導等が必要であると考えています。


 一方、こうした引用資料が明記されておらず、その他の公表情報を検索しても記載されている根拠となる情報が入手出来ない場合は、同等の記載は不可能と判断し、場合によっては、当該項目自体を削除せざるを得ません。医薬関係者が医療に必要とされている項目の情報欠損は、通知で求められている同等の情報提供と言えるのかどうか、大きな疑問です。


②記載内容上の課題
 記載内容上の課題は、以下の通りです。
・一部の先発医薬品の添付文書において、有効率や副作用発現頻度等の数値が、公表情報と一致しないケースが存在する。
・公表情報に記載されていない情報が、先発医薬品の添付文書に記載されており、その記載の根拠が不明となっている。

 公表情報を基にジェネリック医薬品添付文書の「薬物動態等」を作成すると、先発医薬品添付文書の「薬物動態等」と異なる数値や内容となってしまう事例が発生することが明らかとなっています。
 また、先発医薬品と異なる数値や内容を記載することは、安全対策上、適正使用上、問題となる事例であり、医薬関係者に不要な混乱を引き起こすことが考えられることから、異なるデータは記載せずに当該項目を削除すべきでは、との考えも示されています。


「薬物動態等」の情報が消失することを防ぐためにも

 平成30年薬価制度の抜本改革により「G1撤退ルール」が定められ、一定の手続きを経れば、長期収載品となった先発医薬品は承認整理が可能となりました。また、いわゆる「古い先発医薬品」や、先発系企業が製造販売する局方品も承認整理可能です。こうした状況により、承認の承継が行われなかった先発医薬品は、発売時から蓄積された有益な情報等を引き継ぐことなく、医療現場から消えることになります。
 公表情報から「薬物動態等」が同等記載できない環境下で、承継されることなく先発医薬品等が承認整理されると、これまで先発医薬品等添付文書に記載されてきた「薬物動態等」の根拠となる情報が消失し、先発医薬品と同等の情報提供が困難な事例が発生することが想定されます。


 当該医薬品の安全対策上、適正使用上、重要であるとの理由から添付文書に記載されている「薬物動態等」の情報が消失することを防ぐためにも、これからも公表情報の在り方が問われているのではないかと考えます。


今後の安全性委員会及び添付文書 WG の活動について

 新記載要領対応は、2024年3月31日までに完了させる必要があり、残された時間は、それほど多くはありません。


安全性委員会では添付文書 WG の活動を通じて

・公表資料に基づく「薬物動態等」の同等記載ひな形の検討、情報共有
・公表情報から同等記載不可能な事例の集積と、当該情報の行政当局への定期的な報告と対応要請
・同等記載不可能な事例の内、重大な問題が懸念される場合の対応スキームの検討
を行うべく、準備を進めています。ひな形の作成は、同一成分のジェネリック医薬品で企業毎に薬物動態等の記載が異なる場合は、医療関係者はどの情報が正しいのか混乱を招くことになります。ジェネリック医薬品の情報提供の信頼性を確保するため、必要な取り組みであると考えています。


最後に

 安全性委員会添付文書WGにて上述した活動を行うためには、会員各社の添付文書業務に従事する皆様の協力が欠かせません。加えて、業務従事者の上司、経営者の皆様のご理解・ご支援も欠かせません。今後の安全性委員会添付文書WGにご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
 また、本稿を読んでくださった医療関係者の先生方、ジェネリック医薬品添付文書における「薬物動態等」の在り方についてご意見等ございましたら、是非ともJGA安全性委員会までご連絡ください。


参考資料
1) JGAニュースNo.133(https://www.jga.gr.jp/information/jga-news/2019/133.html
2) 医療用医薬品添付文書新記載要領 説明資料(http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/allotment/descriptions.html
3) ジェネリック医薬品添付文書記載要領 説明資料(https://www.jga.gr.jp/library/pdf/medical/1191118141530.pdf


JGAニュースNo.146(2020年6月号)