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法律・制度

選定療養について

選定療養について

 混合診療(保険診療と保険外診療の併用)については、原則として禁止されており、全体について、自由診療として整理される。
 その理由としては、いわゆる混合診療を、無制限に導入すると

  • 本来は、保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化 → 患者の負担が不当に拡大するおそれがあること。
  • 安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまう → 科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長するおそれがあること。

 が挙げられており混合診療が認められる場合には、一定のルールの設定が不可欠とされています。
 厚生労働大臣が定めた場合に限り、保険外診療の併用が認められますが、この制度を「保険外併用療養費制度」といいます。
 保険の枠を超える部分についての差額は自己負担とし、保険が適用される療養にかかる費用は保険診療に準じた保険給付が行われます。
 保険外併用療養費の制度としては、平成18年の診療報酬改定時に健康保険法を改正して、特定療養費制度から評価療養と選定療養に整理され、平成28年に、更に、患者申出療養が追加されました。
 この際、選定療養には、以下に該当するものがまとめられたと説明されています。
 ●快適性
 ●利便性に係るもの
 ●医療機関の選択に係わるもの
 ●医療行為等の選択に係わるもの

<参照>
中医協診療報酬基本問題小委員会(第86回)(平成18年7月26日)資料(診-1-1)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0726-8a1.pdf

具体的な例(類型)及び、費用負担の内訳は下図のとおりです。

 

<引用>
〇保険外併用療養費制度について
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000921208.pdf

 選定療養は、健康保険法第六十三条第二項第五号及び高齢者医療確保法第六十四条第二項第五号に規定され、具体的には、「厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養」(厚生労働省告示第四百九十五号 平成十八年九月十二日)に定められています。
 選定療養は、保険適用を前提としない患者が特別に希望する医療として、この告示の第二条に上の図の11類型(令和4年10月1日現在)が定められています。
 患者自己負担額についても、一定の基準、ルールが定められています。
 たとえば、紹介状なしの大病院(200床以上)での初診、再診の場合は、金額まで定められており、初診では、医科7000円以上、歯科5000円以上を、再診では、医科3000円以上、歯科1900円以上を徴収すると定められています。これは、大病院とそれ以外の医療機関の機能分担のため、大病院への初診・再診の集中を抑える狙いがあるとされています。

<参照>
「厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養及び選定療養」(厚生労働省告示第四百九十五号 平成十八年九月十二日)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa8411&dataType=0&pageNo=1
「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」(厚生労働省告示第百七号 平成十八年三月六日)第一の三
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa7837&dataType=0&pageNo=1

 令和6年度診療報酬改定においては、長期収載品から後発品への置換えを促進する意味で、後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が50%以上となった長期収載品を対象に、長期収載品と後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の1を選定療養の自己負担として、患者から徴収する制度の導入が決定しています。そのため、長期収載品が選定療養に追加されることも決定しています。
 保険給付と選定療養の負担についての具体的な論点・イメージは、下図のように説明されています。

 

<引用>中医協総会(第573回)(令和5年12月15日)資料 総-6 P8
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001179011.pdf
 
 選定療養費として患者に請求される金額は、青いラインの上の部分となりますが、価格差の4分の1と決められています。保険給付の対象は、後発品の最高価格帯の薬価+薬価差の4分の3とされています。
 この図で、大病院への初診、再診のように、所定の金額+αを徴収することや、減額すること(図の論点2)については、認めないこととされています。
 医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)や、後発医薬品を提供することが困難な場合(例:薬局に後発医薬品の在庫が無い場合)、選定療養とはせず、引き続き、保険給付の対象とすることとされていますが、実際上どのような手続きとするか、制度について患者にいかにして、周知してゆくかが課題とされています。

 長期収載品の選定療養の実施は、令和6年10月からとされていますが、上記課題がどのように、整理されるのか、長期収載品⇒後発品の置換促進策として、どのような効果が見られるかが注目されます。

<参照>
中医協総会(第578回)(令和6年1月12日)資料 総-2 P3
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001189149.pdf
中医協総会(第576回)(令和5年12月27日)資料 総-5-1 P3
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001184441.pdf