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GE薬協コラム

【Factに迫る!】『ESG経営』について

【Factに迫る!】『ESG経営』について
目次

【Factに迫る!】『ESG経営』について(PDF版)
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参考:https://www.jga.gr.jp/policy.html

現在、コロナ禍をきっかけとして、個人投資家や機関投資家の間で、社会課題を意識した投資行動が一層広がっているとされます。そこで注目されるのが、企業における「ESG経営」です。“ESG経営”とは一体どのようなものなのか?今回は、「ESG経営」について迫って参ります!

 

①ESGとは

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉です。

②ESG経営

脱炭素などの社会課題が顕在化しているなか、企業がESGに配慮した取り組みを行うことは、将来の経営基盤強化につながると考えられています。
その中で企業の財務情報である有価証券報告書以外に、非財務情報を明示している統合報告書が注目されています。

③事例1

例としてエーザイの分析(図1)を示します。

 

(図1)引用:ハーバードビジネスレビュー2021年1月号特集ESG経営より作図

エーザイでは長年、非財務情報を分析しており、企業価値を「PBR(株価純資産倍率)*1を超える部分」を非財務価値、いわゆるESGの「見えざる価値」として捉えています。
人件費を1割アップすれば5年後のPBRは13.8%アップ、研究開発費を1割アップすれば10年以上でPBRが8.2%アップ、女性管理職比率を1割アップすれば7年後にPBRが2.4%アップする等々を例示し、このような取組をすると数年後に500~3,000億円程度、企業価値が上がることになるとのエビデンスを示しています。

 

④事例2

次にNECの分析(図2)を示します。

 

(図2)引用:日本経済新聞2021年12月11日朝刊より作図

NECにおいても、従業員1人当たりの研修日数、平均勤続年数、部長級以上の女性管理職を各々1%アップすることで5~7年後にPBRがそれぞれ2~7%アップすると分析しています。
非財務指標での取り組みを財務指標と結びつけることで、中長期的に強い財務基盤を作り、社内での分析を継続し、効果が見えれば非財務分析を経営の改善につなげるモデルの外販を目指すと公表しています。

⑤まとめ

以上のように、ESG経営の考え方は、非財務情報として企業にとって非常に重要な経営指標であることが周知されてきました。いうまでもなく医薬品・医療機器などの生命関連企業にとってもこのESG経営は欠かせません。
一方で、ガバナンスに注目してみるとガバナンスはコンプライアンス(法令遵守)を維持したり改善したり、あるいは生産性向上を目指すための「具体的な管理体制」だと言えます。
国民の保険料、税金から収益(利益や給料)を得ている医薬品・医療機器企業は、特にこのガバナンス・コンプライアンスが大切であることは言うまでもありません。

企業経営においてはパーパス(存在意義)、ミッション、目標設定(指標)を明確にし、行動基準を可視化(みえる化)することが重要です。つまり、ひらたく言えば『我々はルールを守ってしっかりビジネスしています。なので 信用信頼してください』と示すべきでしょう。

今日、製薬企業を俯瞰的にみると、新薬開発企業は新薬開発を、ジェネリック医薬品製造企業はジェネリック医薬品の安定供給と、社会的使命としてのポジショニングが明確になってきました。
一方で、製薬企業におけるガバナンス・コンプライアンスに反する行為の頻発は残念でなりません。
現在、数量シェア約8割に達しているジェネリック医薬品製造企業においても、国民の健康と生命を背負っているという矜持・プライドを持ち、ESG経営を推進すべきと考えます。
そして、医薬品・医療機器企業は、国民の利益と福祉に資する安心安全なヘルスケアプラットフォームを構築し、ヘルスケアの未来の価値創造に邁進していくことを願います。


文責:ニプロ株式会社 学術情報部 山口博人(日本FP協会会員AFP)

* 【PBR(price book-value ratio):株価純資産倍率】株価が割安か割高かを判断するための指標。一株あたり純資産に対する株価の倍率を測る指標。
株価純資産倍率 = 株価 ÷一株あたり純資産。
PBRが1倍であれば時価総額である企業価値と会計上の価値(簿価の純資産)が同等とみなされる。一般にPBRが1を割っている場合は、その会社の解散価値より株価総額が下回っていることになる。
参考:日本証券業協会「金融・証券用語集」https://www.jsda.or.jp/jikan/word/117.html

次回の記事では、「GE薬協会員企業の“非財務情報”(仮)」についてご紹介いたします。お楽しみに!

【参考情報】
経済産業省ESG投資
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ESG投資
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/