
【Factに迫る!】『価値創造思考(イノベーション思考)』について
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前回は『イノベーション・プラットフォーム』について紹介いたしました。
今回も読者の反響から、イノベーションに関連して、『価値創造思考(イノベーション思考)』について、取り上げます。
『価値創造思考(イノベーション思考)』において、「経営教育―人生を変える経営学の道具立て―」を紹介いたします。
①『価値創造思考(イノベーション思考)経営教育』
今回、慶応義塾大学商学部 岩尾俊兵准教授の著書『経営教育』―人生を変える経営学の道具立て―から、「価値創造思考(イノベーション思考)」について紹介いたします。(図1)

(図1)著者作図
引用:経営教育 岩尾俊兵[著] 角川新書
経営教育―人生を変える経営学の道具立て―において、岩尾准教授は私たちの時代の苦しさの原因は、「有限な価値の奪い合い」にあると喝破されています。
「価値あるものを他人から奪うことでしか豊かになれない」との思い込みによって社会に閉塞感がただようといったような、現代日本をむしばむ「価値有限思考」について論考されています。そして、この苦しさからの出口戦略として、「価値有限思考」から脱却し、 価値は創れること=「価値無限思考」を提唱されています。
日常を「価値創造の場」に変えようとの取組です。岩尾准教授はこれを「経営教育」と呼んでいます。経営とは「他者と自分とを同時に幸せにする道を見つけ出す価値創造」ということです。
また、「誰もが人生の経営者」であるとしています。
「家庭でも、仕事でも、だれもが価値創造(イノベーション)の場を持っている」
「価値創造のための思考道具がある」ということを強調しています。
そして、「私たちが奪い合いから脱する方法はあるのか?」との疑問に対して、答えは「ある」としています。価値無限思考の実践を可能にし、個々人が哲学を持って価値有限思考と価値無限思考の使い分けをおこなえば良い と述べています。
そこで、次章以降、価値無限思考の思考道具として、「価値創造三種の神器」を紹介いたします。
価値創造(イノベーション)が、企業や個人の成長に資することは言うまでもありません。
②『価値創造思考(イノベーション思考)価値創造三種の神器』
「価値創造三種の神器」の一つ「未来創造の円形」について紹介します。(図2)

(図2)著者作図
引用:経営教育 岩尾俊兵[著] 角川新書
岩尾准教授曰く、「未来創造の円形」は、未来についての価値創造の思考道具である。誰もが応援したくなる未来を提案するための手法です。
未来のビジョンは、他者からみても望ましいものである必要がある。一方で、自分の根源的な欲望とつながっていないビジョンはただの綺麗事です。綺麗事だけでは未来を実現しようという強烈な意欲がわかないのが人間というものです。
他者志向でないと永続的には実現できず、自己志向でないと実現までの困難を乗り越える意欲がわかない。この矛盾を解決するのが未来創造の円形です。
この思考道具の使い方を解説していきます。
紙などに三重丸(さんじゅうまる)を書きます。その一番中心の丸に自分の根源的な欲望を書いてみましょう。
その欲望をまずは、「奪う」から「創る」へと第一変換します。
そして、次に、第一変換された後の目標を今度は「利己」から「利他」へと第二変換します。
私的な欲望さえも、「奪う」から「創る」への第一変換と、「利己」から「利他」への第二変換を通じて、公的なビジョン=大義名分 へと変わります。
と述べられています。
岩尾准教授ご自身の例を挙げてみますと、欲望は「歴史に名を残す」ですが、この欲望は総理大臣になる、著名な賞を獲る といったような限られたポジションや価値を奪い合いに発展しかねません。これを「奪う」から「創る」に変換してみると「新たな学問体系を打ち立てる」といったものになる。
これだけだとまだまだ他者から応援されるようなビジョンになりえません。「新たな学問体系を打ち立てる」は利己的すぎるので、「利己」から「利他」へと第二変換すると「仕事を楽しくしながら利益も上がる思考の道具を配る」といったようになります。
そして、「価値創造三種の神器を無償で配って行く」という困難で経済的リターンもない活動は、まさに未来創造の円形によって筆者自身ビジョンを再設定した結果として生まれたものなのです。
と岩尾准教授は述べられています。
個々のビジネスパーソンの視点にたっても、この「未来創造の円形」は非常に示唆に富む思考法と考えます。
「欲望 ⇒ 目標(奪う → 創る)⇒ ビジョン(利己 → 利他)」への2回変換がKeyです。
「未来創造の円形」は、価値無限思考からの価値創造思考(イノベーション思考)への一歩目として大切なものと考えます。ビジネスパーソンご自身のイノベーションに寄与します。
次回以降も、「価値創造思考(イノベーション思考)」「価値創造三種の神器」を紹介して参ります。
VUCA時代のエクセレントビジネスパーソンは、「価値創造思考(イノベーション思考)」を身に付けることで、いつまでも変化できる自分自身をマネジメントし、エキサイティングに、「ありたい姿」である未来の価値を創造し、自分らしい「ウェルビーイング」に近づける可能性が高まります。
③最後に
医薬品・医療機器企業はこれから、「価値創造思考(イノベーション思考)」を実践することで、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)
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