
※利用ポリシー:本資料の転載・改変は禁止いたします。ご利用の際は、ご所属団体・企業等の規定(社内審査等)に従ってください。
参考:https://www.jga.gr.jp/policy.html
前々回、『マネジメント 現在・過去・未来(パート3)』について紹介いたしました。
今回も、読者の反響から、マネジメントの土台に関連して、『心理的安全性』について、取り上げます。
今回、『マネジメント 現在・過去・未来(心理的安全性)』において、「失敗の本質」と「縄文時代」について紹介いたします。
①『マネジメント 現在・過去・未来(心理的安全性)』(失敗の本質)
今回、ハーバードビジネスレビュー(HBR)の論考から、心理的安全性に関して「失敗の本質」ついて紹介いたします。(図1)

(図1)著者作図
引用:ハーバードビジネスレビュー2023年8月号
ハーバードビジネスレビュー2023年8月号 で、HBR100周年企画として、一橋大学 野中郁次郎名誉教授と小野浩教授が対談し、人的資本経営は「人間らしさ」に回帰する と題して、これからの「人を活かす経営」に求められる要素を探っています。
その中で、小野教授は、野中名誉教授らの著書「失敗の本質-日本軍の組織論的研究」について、米軍は科学的合理性に基づいていたのに対し、日本は精神主義で戦っていた。
同調や同化が求められ、厳しい上下関係の中で、同じような教育を受けたエリートが、密閉空間で意思決定する。これは、現代用語でいうと「心理的安全性」が欠けた組織としています。
また、異論を放てない、若い人が発言できない、多様性と言いながら、組織内の少数派や立場の弱い人は何も言えない、いわゆるウェルビーイングが低下している状態である。さらに、日本企業には、いまだに、そういうカルチャーが残っている と論述しています。
そして、組織がビジネスパーソンに選ばれるためには、失敗の本質に向き合わなくてはならない。日本の一流企業でも、いまだに精神主義で合理性を欠き、会議で発言できなかったり、不正を知っても変えずに目をつぶったりする風潮がある。
そういう部分を排除して、知的な議論や対話ができるようになることを切に願っています と論じています。
一方、野中名誉教授は、過去と未来をつなげながら、一人ひとりが本質を突き詰めて考え、多様な経験を共有し、たえず知的コンバット(対話・討論)をすること。そして、「輝かしい失敗」を許容するトップのリーダーシップが期待されます と述べられています。
まさに、トップや上司の顔色を伺う、忖度等の内向き論理を否定されています。
本来は、顧客や市場に対する外向きなマネジメント(経営)が必要でしょう。
ただ、昨今の金融業界等の不祥事を鑑みるに、組織風土の改革は相当難しいこともわかります。
しかし、これらのことから、組織風土の課題を克服し、「心理的安全性」「ウェルビーイング」*を高めることが、個人や企業のサステナブルな成長、そして持続可能な社会の実現へと繋がることは言うまでもありません。
*既寄稿『Society 5.0』(2023.04.03)-ウェルビーイング・利他的-参照
既寄稿『インパクト加重会計』(2023.01.05)-ウェルビーイング-参照
既寄稿『ウェルビーイング経営』(2022.06.01)参照
②『マネジメント 現在・過去・未来(心理的安全性)』(縄文時代)
『心理的安全性』に関連して、「縄文時代」について紹介します。(図2)

(図2)著者作図
引用:縄文人に相談だ [著]望月昭秀 株式会社 国書刊行会
参考:縄文力で生き残れ [著]望月昭秀 株式会社 創元社
昨今の研究から、約1万年続いた縄文時代はサステナブルな狩猟採集社会(Society 1.0)*であった と推察されています。
土偶や縄文土器から見てとれるように、我々現代人をも、わくわく魅了される、豊かな精神文化を創造していた可能性もあります。
縄文時代は、後の稲作文明にあるような余剰が生まれ一部のヒトへの富の蓄積や格差も少なく、狩猟採集による分かち合う文化があったように考えられています。
自然から学び共存共栄していたからこそ、サステナブルな社会を築き、未来の我々にも学べる事柄があるように察せられます。
ウェルビーイングという言葉はなかったでしょうが、もしかしたら必要以上に情報過多な我々現代人より、「人間らしさ」に回帰する人間味のある生活、心理的安全性の高いライフサイクルを送っていたのかもしれません。
例えば、「悩みなんて全部まとめて貝塚にポイ」というフレーズがありますが、貝塚も森も神もヒトも自然の一部であり、縄文的循環の輪の中にあるとの考え方です。(縄文人に相談だ)
心理的安全性が高く、身体的・精神的・社会的にウェルビーイングな状態として、個人のウェルビーイング向上のヒントがあるのではないかと考えます。
ヒトは、他人の幸せをつくることで自分も幸せを感じる。
縄文時代には食料採集に時間を割かれ、難しかったかもしれませんが、ウェルビーイングの向上は、幸福時間(幸せと感じれる時間)を増やすことです。
このような縄文時代においても「経験から見出される強みを認識した上で、やりがいを感じられる役割に向けて取り組むと、強みを伸ばしながら自分らしいキャリアを歩めた」のではないでしょうか。
我々現代人も、縄文人のDNA(遺伝子)をある一定の割り合いで受け継いでいます。
「心理的安全性」についても過去の縄文人に学ぶべき事があるかもしれません。
変化が激しいこれからの時代、「心理的安全性」を高めた状況で、強みを伸ばしながら、わくわくエキサイティングに仕事ができるビジネスパーソンが増えていくことを期待します。
VUCA時代のエクセレントビジネスパーソンは、いつまでも変化できる自分自身をマネジメントし、エキサイティングに、「ありたい姿」である未来の価値を創造し、自分らしい「ウェルビーイング」に近づける可能性が高まります。
*既寄稿『Society 5.0』(2023.04.03)参照
③最後に
医薬品・医療機器企業はこれから、「心理的安全性」を十分に考慮し、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/250106.html
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/231201.html