
【Factに迫る!】『価値創造思考(イノベーション思考)パート2』について
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前回、『価値創造思考(イノベーション思考』について紹介いたしました。
今回も、読者の反響から、『価値創造思考(イノベーション思考)パート2』を紹介します。
今回、「経営教育―人生を変える経営学の道具立て―」から「価値創造三種の神器」の1つ目「未来創造の円形」に続き、2つ目の「問題解決の三角形」について紹介いたします。
①『価値創造思考(イノベーション思考)価値創造三種の神器、問題解決の三角形』
今回、慶応義塾大学商学部 岩尾俊兵准教授の著書『経営教育』―人生を変える経営学の道具立て―から、「価値創造三種の神器」の2つ目として「問題解決の三角形」について紹介いたします。(図1)

(図1)著者作図
引用:経営教育 岩尾俊兵[著] 角川新書
岩尾准教授曰く、
他者とともに創り合える未来は見つけられたとしても、その未来の実現のためには乗り越えるべきハードルがたくさんあります。
そして、そのハードルのどれもが、結局は人間関係における「対立」に由来します。
人が生きているかぎり対立がなくなることはありません。
別の場所に生まれて、別の育ち方をして、別の身体を持っている人間同士が対立しないほうがよっぽど変です。
対立が生じるということは、人々の思考性に多様性があるということです。
多様性があるということは、思考における突然変異と自然淘汰が起きる余地があり、社会が進化する可能性があるということでもあります。
人間が社会的な動物として生きていくためにも対立は必要だといえます。
とはいえ、対立は乗り越えられる(昇華できる)からこそ意味があるのです。
対立を創造的な形で解消していき、誰もがあっと驚くような問題解決を導くための思考道具が存在します。
と述べられています。
これを、岩尾准教授は「問題解決の三角形」と呼んでいます。
次章、「問題解決の三角形」について具体的に紹介いたします。
②『価値創造三種の神器、問題解決の三角形』
「価値創造三種の神器」の「問題解決の三角形」について具体的に紹介します。(図2)

(図2)著者作図
引用:経営教育 岩尾俊兵[著] 角川新書
岩尾准教授曰く、
問題解説の三角形は、もともとは、世界を席捲した日本の経営技術であるトヨタ生産方式から発展させたものです。
トヨタ生産方式には常に「究極の目的はなんだったのか?」を問い直すメカニズムがあります。
トヨタ生産方式や制約理論といった実績が確かな経営技術の本質的な要素を抜き出し、誰でも使えるように筆者自身の手で簡易化したのが問題解決の三角形です。
簡易化する過程で問題解決の三角形の知財権は筆者に移っています。
そのため、筆者がここで未来創造の円形と同様に問題解決の一切の知財権を放棄すると宣言すれば、誰もが自由にこの思考道具を使うことができます。
会社の研修で共有するのも、友人知人と共有するのも、この思考道具を使って日々の仕事の問題を解決するのもすべて自由です。
問題解決の三角形は「問題の三角形」を「解決の三角形」へと変換する思考道具です。
未来の実現を阻む問題のすべては人間関係の対立から生じると述べました。
問題は難しいものでなくてもかまいません。
職場における意見対立だとか、友人との喧嘩の原因だとか、夫婦喧嘩の理由だとか。
何でも大丈夫です。
会社経営における重大な決断や、政策的に難しい国家運営の問題にも問題解決の三角形が利用できます。
と述べられています。
③『価値創造三種の神器、問題解決の三角形』

(図3)著者作図
引用:経営教育 岩尾俊兵[著] 角川新書
以下、岩尾准教授のより具体的な解説によると、
具体的な問題を解決してみましょう。
これらは筆者が自分自身の問題を解決したり、著者の友人・知人が仕事や家庭の問題を実際に解決したりした例です。
おでん屋さんの例です。
このおでん屋さんは夫婦でお店を経営していらっしゃいました。そして、旦那さんは、「値上げする」、奥さんは「値上げしない」と、真っ向から意見が対立していたのです。
また、「インフレで飲食店経営が厳しい状況にある」という漠然とした悩みが、具体的には、「値上げする」「値上げしない」という対立構造から生まれていると分かりました。
そこで筆者は次に「対立の究極の目的は何か?」とおでん屋さん夫妻に聞いてみました。二人ともが目指している共通目的を探るわけです。
すると「お店を続けられる」という究極の目的に対して「値上げする」「値上げしない」という手段がそれぞれどう寄与しているのか考えてもらいました。その結果、「利益率を維持できる」「常連さんを逃さない」という二つの寄与が発見されました。
値上げする⇒利益率を維持できる⇒お店を続けられる。これは論理的に正しいわけです。
値上げしない⇒常連さんを逃さない⇒お店を続けられる。これも論理的に正しい。
どちらも論理的に正しいから一歩も引かなかったのです。
しかし、解決の三角形をみてみると、「究極の目的への寄与同志」なら両立できそうです。
具体的には「利益率を維持できる」「常連さんを逃さない」の二つは両立できるかもしれません。
「値上げする」「値上げしない」という手段同士は「あれか」「これか」で両立不可能です。でも、手段に振り回されずに究極の目的への寄与だけを考えれば、両立の道が見えてくるのではないでしょうか。
お店を続けるために、常連さんを逃さずに利益率を維持する方法がないか。これを考え続ければいいわけです。
結果的に、「インフレでどこも値上げしているから、値上げしても常連さんは逃さない」ということで「値上がりする」という結論に落ち着いてもかまいません。
このおでん屋さんの場合は違いました。
解決の三角形を眺めているうちに「値上げせず、ネット広告をすべて削減して利益率を維持し、広告の代替案として常連さんにSNS拡散を手伝ってもらう」という解決策を見つけました。
客席に「うちはインフレに負けません!値上げしません!かわりに広告費がなくなったので、
このお店いいねと思ったらSNS拡散お願いします・・・・(泣)」というポップを置くようにしたのです。
周辺のお店がどこも値上げしている中でこの対応です。当然ながらお客さんが殺到するようになりました。このおでん屋さん、いまでは大人気店になって、近隣に三店舗を展開するほどのお店になりました。
「そもそも何を目指していたのか」「究極の目的は何か」を考える。
本書では、人間の脳みそを「価値ある問題解決を生み出せる油田」と捉えていました。
問題解決の三角形という思考道具をインストール(導入)するということは、脳みそという油田を掘削するのと同じです。
あとは湧き出る解決案の数々を、精製してより良いものに変えていけばよいだけです。
と岩尾准教授は述べられています。
これは、個々のビジネスパーソンの視点にたっても、この「問題解決の三角形」は課題解決の
思考法―脳みそを「価値ある問題解決を生み出せる油田」―として、非常に示唆に富むものと考えます。
岩尾准教授によれば、この問題解決の三角形を使った思考道具を一発で使えるようになるのは、一流企業の幹部研修でも10人中、1人くらいとのことです。
しかし、何回か根気よく練習すれば、社会人だけでなく、中高生、小学生までもが使えるようになる思考道具とのこと。
図2の右側「解決の三角形」の(究極の目的)を「幸せに生きていきたい」とした場合、多くのビジネスパーソンにとってもKeyと考えます。
これは、だれもがウェルビーイングなるための問題解決に資するのではないかと思います。
そして、ビジネスパーソンご自身のイノベーションに寄与するかもしれません。
次回以降も、「価値創造思考(イノベーション思考)」「価値創造三種の神器」を紹介して参ります。
VUCA時代のエクセレントビジネスパーソンは、「価値創造思考(イノベーション思考)」を身に付けることで、いつまでも変化できる自分自身をマネジメントし、エキサイティングに、「ありたい姿」である未来の価値を創造し、自分らしい「ウェルビーイング」に近づける可能性が高まります。
④最後に
医薬品・医療機器企業はこれから、「価値創造思考(イノベーション思考)」を実践することで、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)
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