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GE薬協コラム

【Factに迫る!】『VUCA時代経営』について

【Factに迫る!】『VUCA時代経営』について
目次

【Factに迫る!】『VUCA時代経営』について
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参考:https://www.jga.gr.jp/policy.html

 

現代は新型コロナウイルスといった感染症などの疾病、台風・地震などの災害、地政学的脅威、AI技術の急激な進化により世の中の変化を予測しにくくなっています。
私たちを取り巻く環境はますます予測不可能性に満ち混沌とした状況です。

その状況を、激しい変動(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)という4つのキーワードで表現し、現代をその頭文字からVUCA時代と呼んでいます。

今回、VUCA時代の企業経営・マネジメントについて『戦略的に未来をマネジメントする方法』、『OODA LOOP』そして『未来予想図』の3つの切り口にて紹介いたします。

①戦略的に未来をマネジメントする方法とは

一般的に企業の中期経営計画や製品マーケティングプランの外部環境分析としてPEST(Politics、Economics、Social、Technology)分析等が使われます。
企業が持続的な成長を実現するには、不確実な時代にも先を見据えた戦略を策定することが不可欠です。未来を完璧に予測することはできませんが、変化に適応する能力を高めるためには、戦略的洞察(strategic foresight)が有効です。戦略的洞察を高め、未来を予測するツールとしては、バックキャスティングやコンティンジェンシープランニングなど様々なものがあります。(図1)

 

(図1)著者作図 
引用:ハーバードビジネスレビュー2020年9月号戦略的に未来をマネジメントする方法

 

その中でシナリオプランニングについて紹介いたします。

シナリオプランニングは現在とは異なる未来の姿を表すストーリーを使って、既成概念を問い直し、現状の捉え方を見直す技法です。ひとつの未来の予測ではなく、起こりうる複数の未来(シナリオA、シナリオB、シナリオC)を探ることによって戦略に役立てます。

シナリオプラニングから最大の価値を引き出すには「自組織の目を未来に向けつつ、現在にも配慮するプロセス」、「現在を見据えつつ未来に目を配るプロセス」という反復サイクルを確立することです。現在と複数の未来との間を、円を描くように行き来すれば、常に戦略を手直しし、更新することができます。(図2)

 

(図2)著者作図
引用:ハーバードビジネスレビュー2020年9月号戦略的に未来をマネジメントする方法

 

シナリオプランニング等により戦略的洞察を身に付ければ好機を見出すことも、それをつかみ取る力を高めることもできます。組織は単に未来に備えるだけでなく、未来を創造していくものです。不確実性が高いVUCA時代にこそ、企業は戦略の上位にある存在意義「パーパス」主導で変化に対応し、未来の価値を創造していかなければなりません。

②OODA LOOP(ウーダループ)とは

一般的に企業の製造現場等ではPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルが用いられます。今回、紹介するOODA LOOP(ウーダループ)は状況の変化に対応できるため近年多くの企業で取り入れられて来ています。

OODAループは元来アメリカ海兵隊由来の意志決定スキル・思考法になります。

観察(Observe)→情勢判断(Orient)→意思決定(Decide)→行動(Act)という4つのフェーズをサイクルではなく、ループさせることで、目の前で起こっている環境に合わせた判断を現場レベルで下し、組織で目的を達成するための意思決定スキルです。

PDCAとの違いはサイクルでなくループのため状況に応じて他のフェーズに戻れることです。外部情報・状況変化に対して自由度が高く変化に対応しやすい意思決定スキルです。
競争が激しく、変化が激しい状況下においてOODAループを上手く活用することにより、素早く適切な意志決定・実行が可能となります。つまり、変化の激しい営業現場等で臨機応変・機動的に行動力を発揮できるツールです。(図3)

 

(図3)著者作図
引用:OODA LOOP チェット・リチャーズ[著] 原田勉[訳・解説] 東洋経済新報社

 

OODAループを取り入れている代表的な企業としてキーエンスやトヨタ等があげられます。キーエンスではこのツールを活用することで営業現場でのユーザーの困りごとをスピードを持って提案解決しています。その結果、製造業最高の営業益を獲得しています。
ここ数年のコロナ禍や不測の事態、急速に発展しているAI、IoT、ビックデータ、ソーシャルメディアという流れのなかで、リアルタイムにデータを収集し、即座に判断して行動に移すというOODAループが競争優位を築くための鍵となります。今後もOODA ループは、迅速に変化に対応する様々な組織で活用されるマネジメントツールになると考えられます。

③未来予想図とは

組織で働く多くのビジネスパーソンも、変化する未来に対応するため種々のキャリアデザインフレームワークを活用しています。昨今、メジャーリーグ・エンゼルスの大谷投手の活躍によりマンダラチャートが注目を集めていますが、今回は「私の未来予想図」について紹介いたします。(図4)

 

(図4)著者作図
参考情報参照:厚生労働省 私の未来予想図(キャリアデザインシート)

 

「私の未来予想図」はビジネスパーソンがビジョンや価値観に基づいてひとりひとりが未来に“ありたい姿”を描くフレームワークです。過去の経験やスキル等をもとに個人個人の強みを活かし個々の目標を達成するものです。

経済学用語の比較優位という概念から導かれるように強みのないヒトはいません。だれもが強みを持っています。未来予想図を活用することでヒトそれぞれが自身の強みを活かし、主体性を持ち価値観に基づいた目標達成のためのマネジメントが可能です。それによって個々のやりがい、QOLの向上、市場価値アップも期待できます。

このフレームワークをはじめ適切な人財育成フレームワークを上手く活用することによって、個々人が世の中の変化に対応でき、個々のウェルビーイング、ダイバーシティ&インクルージョン、誰一人取り残さない(leave no one behind)SDGsを達成することも可能かもしれません。

④まとめ

以上のように、VUCA時代の企業・個人にとって、より一層世の中の変化に対応し、未来の価値を創造するマネジメントが必要になります。いうまでもなく医薬品・医療機器などの生命関連企業にとっても同様です。

医薬品・医療機器企業で働くヒトも企業も世の中の変化に対応し、未来をマネジメントすることで、患者さんのQOLに貢献し、国民の健康ウェルビーイングに寄与するとともに健康寿命を伸ばし、医療財政の最適化に寄与し、少子高齢化のなかでも持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。

 

2022年4月
文責:ニプロ株式会社 学術情報部 山口博人(日本FP協会会員AFP)

参考情報
◯『パーパス経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220325.html
◯『ESG経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220120.html
◯厚生労働省 私の未来予想図キャリアデザインシート~Dream come true~
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/jinzai_236_img1.pdf