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【Factに迫る!】『ウェルビーイング経営』について

【Factに迫る!】『ウェルビーイング経営』について
目次

【Factに迫る!】『ウェルビーイング経営』について
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参考:https://www.jga.gr.jp/policy.html

 

現在、新型コロナウイルスといった感染症などの疾病、台風・地震などの災害、地政学的脅威のあるVUCA時代において、国内外の産業界ではウェルビーイングを経営に取り入れる動きが拡がっています。

今回、ウェルビーイング経営について『企業マネジメントとしてウェルビーイング経営』、『個人のウェルビーイング』の2つの切り口にて紹介いたします。

①企業マネジメントとしてウェルビーイング経営

2020年 蘭イフェクトリーの調査では日本で『働きがい』を感じている人の割合は9%と、世界各国の平均35%を大きく下回り、調査対象の57カ国で最低となっています。(図1)

岸田内閣の「新しい資本主義」のもと働き方改革の促進が加速されるなか、働きがいが世界最低の日本企業に「労働市場」と「資本市場」からの圧力が強まっています。

もともと日本は「労働市場」の流動性が低く、働く側は安定志向が強い傾向がありましたが、コロナ禍によるテレワークの定着によって長時間通勤や硬直的な労働時間に対して、働き手は強い疑問を持つようになってきました。

この環境下で労働市場の流動化が進むことは企業にとっては大きな脅威となります。
企業はエンゲージメントサーベイで働き手の意欲を計測し、意欲改善に取り組む必要に迫られています。いわゆる働き手の幸福度の『見える化』が必須となっています。

 

(図1)著者作図 
引用:日経ヴェリタス第725号2022年1月30日

 

一方、「資本市場」からは、働きがいの改善が業績改善や株価上昇に相関があるとの研究成果が発表されてきたため、従業員の幸福度が企業業績の先行指標と見なされるようになってきました。
米国でも同種の研究が発表されてきたため非財務情報として従業員の幸福度が大きな注目を集めています。その結果、2020年8月から米国では米国証券取引委員会(SEC)により人財育成や現場の健康管理である人的資本関係の情報開示が義務化されました。

2021年6月改定の日本コーポレートガバナンスコードにも人的資本について具体的に情報開示すべきとの条項が盛り込まれました。近々、日本の上場企業も「従業員幸福度の向上」を非財務情報としてESG(環境・社会・ガバナンス)の開示対象に含めるようになると予想されます。

資本市場は働きがい『エンゲージメント』を、有望な投資先を見つけ出す判断基準としてきています。今後は働きがいの低迷を理由としたダイベストメント(投資撤退)が出てくる可能性も大きくなってきました。
今まさに、会社と個人のパワーバランスが変わろうとしています。

②個人のウェルビーイング

ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的にすべてが満たされている状態です。

個人の視点でみると、喫煙や睡眠・食生活など問題のある生活習慣が改善されること、育児や介護、病気や老後への不安が解消されること、組織へのエンゲージメントが高いこと等々全てが影響し、「より良い」状態こそがウェルビーイングといえます。

個人のウェルビーイングが実現するということは、そのヒトが抱える課題や不安などが解決されるということになります。(図2)

 

(図2)著者作図
引用:ハーバードビジネスレビュー2018年11月「働く私たちの幸福学」前野教授講演録、日本経済新聞2022年1月14日

 

一方、幸福学の研究も進んでおり、幸福学研究の第一人者 慶応大学大学院前野隆司教授は幸せの『4つの因子』を見いだしました。
➀スキル自己実現と成長の因子(やってみよう因子)➁つながりと感謝の因子(ありがとう因子)③前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)④独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)です。
➀やってみよう因子、③なんとかなる因子、④ありのまま因子の3つは西洋的な個人主義因子です。一方、②ありがとう因子は「貢献しよう、みんなと共に」というのが、東洋的な集団個人主義の幸せといえます。
どれが大事ということではなく、個人の強さを持ち、みんなと共にやる優しさや豊かさを持っている人が幸せである、との研究結果が判明しています。

前回コラムの未来予想図にもあるように、だれもが強みを持っています。ヒトそれぞれが自身の強みを活かし、エキサイティングに周りのメンバーと協働することで個々のウェルビーイングを実現できます。

さらに、個人が所属する組織において自身が成長できているとの「成長実感がある」、エンゲージメントの向上があれば、よりウェルビーイングな状態に近づくことができます。

個人が各々の力を存分に発揮できることは企業力の向上にもつながります。個人のウェルビーイングの実現は、企業価値の向上、ひいては社会全体のウェルビーイングにもつながっていきます。まさに社会が目指すべきゴールといえます。

③まとめ

以上のように、VUCA時代の企業・個人にとって、ウェルビーイングは大切な概念です。2025年『いのち輝く未来社会のデザイン』を掲げた大阪・関西万博をひかえた生命関連企業にとっても同様です。                                           

医薬品・医療機器企業は国民の健康ウェルビーイングに資することが使命です。
当該企業で働く社員がウェルビーイングでなければ、国民のウェルビーイングに貢献することはできないのではないでしょうか。
医薬品・医療機器企業は今後益々、国民のウェルビーイングに寄与し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。

 

2022年5月
文責:ニプロ株式会社 学術情報部 山口博人(日本FP協会会員AFP)

参考情報
◯厚生労働省 私の未来予想図キャリアデザインシート~Dream come true~
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/jinzai_236_img1.pdf
◯一般社団法人ウェルビーイングデザイン
https://www.well-being-design.jp/
◯『VUCA時代経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220510.html
◯『パーパス経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220325.html
◯『ESG経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220120.html