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【Factに迫る!】『KPI経営』について

【Factに迫る!】『KPI経営』について

【Factに迫る!】『価値創造経営』について
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参考:https://www.jga.gr.jp/policy.html

 

岸田内閣の「新しい資本主義」では、5年間で1兆円を投じる「人への投資」が注目されています。
人的資本経営で、この「人への投資」と企業価値向上のつながりの中で、人的投資の関連指標として、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が重要です。

今回、『KPI経営(マネジメント)』とマネジメントに関連して『当事者研究(多様性のマネジメント改革)』について紹介いたします。

 

(図1)著者作図
引用:内閣官房 人的資本可視化指針 非財務情報可視化研究会

 

①『KPI経営(マネジメント)』(図1)
KPIはごくごく簡単に言うと行動結果の定性的な変化、定量的変化を指標化、分析し、可視化(見える化)していくことです。
目先の売上や利益など具体的数字で示されているものは小中学生でもわかります。

KPIは特に定性的(質的)な変化を見える化し、目標達成度を評価する指標として有用です。
企業の競争力の源泉である、エンゲージメント度やウェルビーイング度の重要な指標としてKPIは役立っています。

図1にあるように人的投資のKPIとして研修投資額や研修項目別の従業員参加総時間(延べ)や(専門性を有する)中途採用人数などがあります。
例えば、エンゲージメント度は社員へのアンケート等で定性的な指標を「見える化」するものです。

そして、人的資本経営において経営層は入念に考え抜いてKPIを設定するとともに、経営環境の変化を踏まえて見直すことが重要です。そして、その際には、当該KPIを設定または見直しをした背景及び理由を達成状況と併せて社内外に説明しなければなりません。

また、単にKPIを設定するだけでなく、設定の背景や理由を説明することで、社員に対しては人材戦略の説得力を高め、その実現に向けた社員の行動変容につながることが期待でき、投資家に対しては自社の人材戦略は経営戦略と連動し、企業価値向上につながっていることをアピールできます。

このような非財務的KPIを年間目標に組み入れ、KPIごとに担当役員に責任を持たせるKPIマネジメントを実施している企業も散見されてきました。

KPIが中途半端なまま経営することは、飛行機に例えると測定されるべき計器(KPI)も見ずに、勘や経験で操縦するようなものです。
環境が変化しないのなら勘や経験で経営できるかもしれませんが、経営環境の変化が激しい現代は残念ながらそうはいきません。
飛行機を墜落させてしまいます。

まさに、VUCA時代の現代、経営層・マネージャーはKPIを用いた、科学的なマネジメントを求められています。

 

②『当事者研究(多様性のマネジメント改革)』(図2)
障害を持ちながら小児科医で東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎氏が「当事者研究」という学術分野を切り開きました。

当事者研究はもともと北海道浦河町にある社会福祉法人「浦河べてるの家」で2001年に始まったものです。幻覚や妄想を持つ精神疾患の当事者が、支援者や仲間にサポートされながら生み出した「自分助け」の方法になります。

 

(図2)著者作図
引用:日本経済新聞社2022年8月14日、内閣府経済社会総合研究所『経済分析』第203号 2021年 熊谷晋一郎ら 当事者研究の導入が職場に与える影響に関する研究

 

熊谷氏曰く、近代の社会は自立や自己決定を善としますが、ヒトという種は元来1人では生きられず、依存し合って生命を保ってきました。依存はヒトのお家芸であり、強みです。愚痴ったり、できないことを手伝ってもらったりするのが当たり前の姿です。

「自立とは依存先を増やすこと」まさに、目からうろこです。

一般的に「自立」の反対語は「依存」だと思われています。しかし、ヒトは物であったり、人であったり、様々なものに依存しないと生きていけません。依存先は多ければ多いほど、一つ一つへの依存度が浅くなります。特定の依存先とうまくいかなくても、代替がきけば安心できます。

従来のビジネスパーソンは、「自分のことは自分で」を基本原則としていますが、例えば、些細なことでも、わからないことを気兼ねなく周りに聞ける環境は大切なことです。

熊谷氏らは2020年東京大学「インクルーシブ・アカデミア・プロジェクト」を立ち上げ、障害を持つ研究者当事者「自身の困りごと」を出発点に障害のある研究者が活躍できる仕組み、生き方を研究しています。

社会の困りごとを解決することが使命である企業のビジネスパーソンにも通じる研究です。

さらに、熊谷氏らは企業との当事者研究プロジェクト「多様性のマネジメント改革」として、当事者研究が職場に与える影響を研究しています。

その中で、社員が各々の能力を発揮できる組織文化の重要性は普遍的なものです。
最近の研究では、
◯謙虚なリーダーシップ(humble leadership)が社員の創造性(creativity)を促進すること、さらに
◯その促進効果は職場の心理的安全性(psychological safety)によって媒介されること、
そして
◯その媒介効果は知識の共有(knowledge sharing)によって修飾されていること
が報告されています。

当事者研究では、「経験は宝」というスローガンのもと、積極的に苦労や失敗談といった「弱さ」を情報公開し、苦労のメカニズムや対処法をグループ全体で研究します。

弱さや失敗は責められるべきものではなく、グループ全体に新しい知識をもたらす貴重な研究資源と位置付けられ、心理的安全性の向上につながります。
また、研究を通じて新たに得られた知識がグループの中に蓄積されていくことで、知識の共有が可能になります。

当事者研究をビジネスに導入することで、リーダーの謙虚さや、心理的安全性、知識の共有が促進され、メンバーの創造性や組織の力を高める可能性があると考えられています。

これらのことは企業が取り組んでいるダイバーシティ&インクルージョンなど多様性のマネジメントの取組と共通する部分が多々あります。

今後の当事者研究の進化は、組織メンバーのウェルビーイングにさらに大きく貢献するとともに企業価値向上に必ず寄与するものと考えます。

そして、昨今、ウェルビーイングの測定において脳科学などを使い、幸福度を測る指標としてもKPIが用いられています。

 

③最後に
KPI経営は医薬品企業にとって、社員のウェルビーイング、企業価値向上につなげるための大変重要な概念です。
医薬品・医療機器企業はこれから、KPIマネジメントにより自社を「魅せる化」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。

 

2022年11月
文責:ニプロ株式会社 学術情報部 山口博人(日本FP協会会員AFP)

参考情報
◯内閣官房 人的資本可視化指針
https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf
◯『価値創造経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/221101.html
◯『ムーンショット経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/221003.html
◯『人的資本経営(パート3)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220901.html
◯『人的資本経営(パート2)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220801.html
◯『人的資本経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220701.html
◯『ウェルビーイング経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220601.html
◯『VUCA時代経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220510.html
◯『パーパス経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220325.html
◯『ESG経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
https://www.jga.gr.jp/jgapedia/ge/220120.html