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【Factに迫る!】「人材バランスシート」について

【Factに迫る!】「人材バランスシート」について
目次

【Factに迫る!】『人材バランスシート』について

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前回、『キャリアオーナーシップ』について紹介いたしました。
今回、読者の反響から、『キャリアオーナーシップ』に関連した「人材バランスシート」について、スポットを当ててみます。
「企業のバランスシート」と「個人の人材バランスシート」について紹介します。

①「企業のバランスシート」

既寄稿『PBR革命』(2023.06.01)で述べたように政府と東京証券取引所は、PBR(株価純資産倍率)向上のため、企業に「資本コストや株価を意識した経営」を促しています。
そこで、企業のバランスシート(BS)を下記に示します。(図1)
 
バランスシート(企業)
(図1)著者作図
引用:日本経済新聞社 2024年2月2日朝刊
 
図1の右側、コストをみると
「資本コスト」には「株主資本コスト」と銀行などから借入れる「負債コスト」があります。
そして、その合計である「加重平均資本コスト(WACC)」があります。
ここで東京証券取引所(東証)が云う「資本コスト」は、「株主資本コスト」を指します。

 

図1の右側、コストをみると
「資本コスト」には「株主資本コスト」と銀行などから借入れる「負債コスト」があります。
そして、その合計である「加重平均資本コスト(WACC)」があります。
ここで東京証券取引所(東証)が云う「資本コスト」は、「株主資本コスト」を指します。

 

一方、図1の左側、リターンをみると
ROE(自己資本利益率)は自己資本(株主資本)を使ってどれくらいの利益を上げているかの指標です。
2014年伊藤レポートでは、企業はROE 8.0%以上を目標とすることが述べられています。

 

この「ROE」が「株主資本コスト」を上回ることが「資本コストを意識した経営」になります。

 

また、「株主資本コスト」を株主の視点からみると、株主の「期待収益率」になります。
仮にROEが株主資本コストを下回ると株主資本コストが下がる、つまり、株主の期待収益率は下がり、株主価値を損ない、株価が低迷します。

 

よって、株主から見た場合、企業の「株価」は重要です。
これが、「株価を意識した経営」になります。

 

企業は、資本効率を改善し、ROEを高め、株主資本コストや株価を意識した経営を求められています。このことが、東証が企業に「資本コストや株価を意識した経営」を促す理由です。

 

例えば、企業が、ガバナンス・コンプライアンスを適切に実施し、非財務情報の開示などの「見える化」に取り組み、この企業は信頼できると確信した投資家が増えれば、株価は上がる可能性が高まります。

 

株主、投資家そして市場(マーケット)は、「資本コストや株価を意識した経営」ができている企業とそうでない企業を選別します。

 

これからの企業は、外部に自社の「見える化」「魅せる化」、戦略的コミュニケーション力によって価値創造ストーリーを示すことが必須になってきています。

 

これが、企業のサステナブルな成長、そして企業価値向上へと繋がります。
 

参考:ROIC(投下資本利益率)、ROA(総資産利益率)、
「エクイティスプレッド」=ROE(自己資本利益率)-株式資本コスト(期待収益率)

 

②「個人の人材バランスシート」

企業のバランスシートを仮に、個人に置き換えてみると、下記のような「人材バランスシート」になります。(図2)
 
バランスシート(個人)
(図2)著者作図
参考:経営戦略としての人的資本開示 HRテクノロジーコンソーシアム[著]
日本能率協会マネジメントセンター
 
バランスシート(BS)の右側、
負債の部から見ていくと、BSの右下、企業では資本金(自己資本)にあたるところが、「自分の成長資本」になります。
この「自分の成長資本」は、新入社員であれば、高校・大学で学んだ知識などにあたります。

 

また、既寄稿『非認知能力』(2024.04.01)にあてはめると、学習、英語力などの「認知能力」と「非認知能力」になります。

 

「非認知能力」はレジリエンス力、コミュニケーション力、冒険心などです。

 

既寄稿『レジリエンス』(2024.05.01)の反響から、日本人は自己肯定感が少ない傾向ですので、もっと自信を持つことが大切です。

 

また、冒険心(Risk Taking)に関連してリスクについての反響がありましたが、本来、リスクとは「能動的に危険を冒して何かを得る」という意味合いが込められていることも知っておく必要があります。
チャレンジが大切なことがよくわかります。

 

これらの「自分の成長資本」には、まだ顕在化されず、自身も気付いてない潜在化している能力もあることも知っておくことが重要です。
個々のビジネスパーソンに大きな可能性があることを示唆しています。

 

そして、BSの右上のセミナー参加、資格取得などの「自分への投資」をしていくことで、BSの左側の「資産」を増やして行くことが涵養です。

 

バランスシート(BS)の左側、
この資産を「成果(付加価値)」として プロティアン・キャリア* ふうに表してみると、論理的思考力、変化適応力、問題解決遂行力、資格・検定取得などの「知識やスキル」、社内・社外関係、健康維持、心理的幸福などの「人とのつながり」、金銭などの「経済的なもの」になります。

 

これらの「資産」は、BSの右側の「自分の成長資本」をもとに「自分への投資」をテコにして成長させることができます。
そして、「どこでも活躍できる」市場価値のある一般的人的資本**を高めることが大切です。

 

また、個人の「資産」は多くの無形資産を含んでいます。この多くの無形資産が企業と同様に個人の成長、イノベーションにつながります。

 

企業の立場からすると、優秀な人材を確保し、人材(人的資本)に投資することによって、個々に成長してもらい、イノベーションを起こし、企業競争力を向上したいことが想像できます。

 

VUCA時代のエクセレントビジネスパーソンは、主体的に「人材バランスシート」を殖やすことで、「ありたい姿」である未来の価値を創造し、自分らしい「ウェルビーイング」に近づける可能性が高まります。
 
*既寄稿『サステナビリティ・トランスフォーメーション』「プロティアン・キャリア」参照
**既寄稿『イノベーションと無形資産』「キャリアデベロップメント・市場価値」参照
 

③最後に

医薬品・医療機器企業はこれから、「人材バランスシート」を戦略的に活用し、自社を「トランスフォーメーション」し、持続可能(SDGs)な国民皆保険を含めた社会保険制度維持に貢献していくべきと考えます。
 
      2024年6月
       文責:ニプロ株式会社 山口博人(日本FP協会会員AFP)

 

参考情報
〇『キャリアオーナーシップ』:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『レジリエンス』:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『非認知能力』:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『ファイナンシャル・ウェルビーイング』:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『イノベーションと無形資産』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『非財務情報可視化』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『2023年ノーベル経済学賞、ノーベル生理学・医学賞』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『リスキリング(鳥の目、虫の目、魚の目)』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『三位一体の労働市場改革』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『女性活躍推進』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『次世代育成支援対策』について:日本ジェネリック製薬協会JGApedia
〇『AI戦略』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『PBR革命』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『日本版ジョブ型』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『Society5.0』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『ウェルビーイング・マーケティング』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『インパクト加重会計』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『KPI経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『価値創造経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『ムーンショット経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『人的資本経営(パート3)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『人的資本経営(パート2)』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『人的資本経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『ウェルビーイング経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『VUCA時代経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『パーパス経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia
〇『ESG経営』について:日本ジェネリック製薬協会 JGApedia